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坂本龍一/嵐が丘(soundtrack)

2005年10月11日 00時25分03秒 | サウンドトラック
 坂本龍一が手がける音楽で世界的に一番有名なのはおそらく映画音楽ではないか。なにしろ、かの「ラスト・エンペラー」でアカデミー賞をとっているくらいだから、YMOとか一時、ヴァージンからワールドワイドで発売されていたロック路線の音楽などより遙かに知名度があるのではないだろうか。この「嵐が丘」はエミリー・ブロンテの原作を、演出ピーター・コズミンスキー、出演ジュリエット・ピノーシュ、ラルフ・ファインズ、シンニード・オコナーといった英国の面々で92年に映画化した作品の音楽を担当したもので、時期的には坂本が「ラスト・エンペラー」以降、もっとも映画音楽家然とした活動をしていたころの作品だったと思う。

 実はこの作品。当時、ほぼリアルタイムで購入したものの、一度通して聞いたのみで、その後なんとなく放置してあったものである。坂本の音楽が幅広く多岐に渡っているので、よほどインパクトがないと、次から次へ出る作品に対応するのが手一杯でこのアルバムのように「いつかじっくり聴いてやろう」などと思いつつ、10年以上たってしまった作品が沢山ある。テレビ朝日絡みで制作されたオペラ作品とか、オケと共演したバルセロナ・オリンピックの式典音楽、そして映画音楽の諸作がその典型で、この作品についても、坂本らしい旋律美のようなものが今一歩不発終わっているように感じたこと、また全体にあまりに静的過ぎてやや音楽の自立性のようなものが稀薄に感じたような記憶がある。

 そんなワケで実に久しぶりにこの作品聴いたワケだが、先の印象は基本的にはかわらないものの、今回聴いて改めて発見したことは、この音楽確かに静的ではあるが、実は情念的な音楽だったということ。ある意味バーナード・ハーマンに共通するようなニューロティックな情念がハーマンほど濃厚ではないけれど、随所に感じられるのが発見であった。ひょっとすると坂本は、大昔にハーマンが作った同じブロンテ原作の「ジェーン・エア」の音楽を参考にしたのかもしれないな....どと邪推したくなったほどだ。ちなみにメイン・タイトルはいかにも「映画音楽の坂本」を感じさせる、いたましいような美しさにあふれたもの。これが全体に循環して、静かな情念に満ち満ちた音楽になっている。また、これにユーリアン・パイプの音色など絡ませて舞台のローカル性をちょいと滲ませたりしているのも特徴だろう。
コメント (1)
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