■ 師走だろうが何だろうが、読書はする。
しばらく前から読んでいた『「維新革命」への道』苅部 直/新潮選書を読み終えた。日本の文明開化は明治維新で外発的に始まったという通念を、実はそうではなくて徳川末期から内発的に始まったということを徳川時代から明治時代に書かれた様々な文献を読み解きながら実証的に論じている。これはなかなか興味深いというか、一般的な通念からすれば驚きの論文だ。
**徳川末期から日本の知識人たちは、西洋の政治・社会のあり方に憧れを抱くようになっていた。しかしそれは、アジアと西洋とのあいだの文化の違いをのりこえ、西洋的な価値観に帰依したというわけではない。富国強兵をめざして西洋を模倣したというような、よくある理解では、「洋才」の導入が中国や朝鮮よりもはるかに円滑だったことを説明できないだろう。むしろすでに抱いていた価値観に基づいて評価したところ、理想により近い社会を、むしろ西洋諸国が実現していることに気づいた驚きが、そこにはこもっていたのである。**(序章28頁)
本書の副題の「「文明」を求めた十九世紀日本」にも、例えば引用した件にも論旨が表れている。本書の帯には**「明治維新=文明開化」史観をひっくり返す! 必読の日本思想史。**とある。必読書かどうかはともかく、明治維新=文明開化ではなかったという論説には驚かされた。
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さて次。
『フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体』藤岡換太郎/講談社ブルーバックス
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