透明タペストリー

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「教養としての建築入門」を読む

2023-12-06 | A 読書日記

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『教養としての建築入門』坂牛 卓(中公新書2023年)を読んだ。

明快な構成 明快な文章

本書は建築を「観賞」「設計」「社会」という3つの視点から包括的に捉え、この3つの視点に対応させて、第一部が観賞論 ― 建築の見方、第二部が設計論 ― 建築の作り方、第三部が社会論 ― 建築の活かし方 と大枠を明快に設定している。そして各部の章立も明快。建築の総体、全体像を分かりやすく説くために全体構成がきっちり練られていることが分かる。そして文章も簡潔、明快だ。

多面的な建築を実に効率よく案内してもらっている気分だ。要するにこういうことなんだと、ものごとの本質を簡潔に綴るのは難しいと思うけれど、著者はそれをしている。

本書では例えば「用・強・美」のような並列的な概念や「主体性と他者性」というような対概念を示して建築を説いている。また、建築を服や料理のアナロジーとして捉えて説いてもいる。なるほどな記述。

論理的なものの考え方から導き出された構成、そして文章。文章に冗長なところは無く、読んでいて海図なき航海を強いられていると全く感じない。目的港に最短コースで進んでいく。それ故、読んでいて物足りなさを感じないわけでもない。勝手なものだ。

本書の具体的な内容については全く触れなかったが、建築の総体の概要を知るのに有用な本だと思う。

**ありがとうございます。Amazonの購入ボタンを押しました!** ラインで本書をすすめた友人からの返信。


以下、まったく余談というわけではないが、まあ余談のような内容。

第一部は機能の器、美の器、アナロジーと言う章題の3つの章で構成されているが、第2章 美の器 に次のような記述があった。**幼少の頃を思い出すと、絵を教える先生には二とおりいた。輪郭線を描く先生と描かない先生だ。(中略)この描き方の差は歴史をさかのぼると、線描を重視するフィレンツェ派と、色を重視するベネチア派の差に見いだせよう。(後略)**(40頁)この後も興味深い記述が続く。

ここを読んで、そうか、ぼくはフィレンツェ派なのか、NSさんはベネチア派なんだ、思った。というのも、10月に開催したスケッチ展に来てくれたNSさんと次のような話をしたから。

以下、10月22日の記事(過去ログ)からの引用。**色と形は描画対象のものの主要な属性、そのどちらに先に意識が向くのかは人によって違う。ぼくの描画対象は風景だが、風景を構成している要素の形にまず注目する。だからまず線描で形を捉え、その後にその形に色を付けるという手順になるのだろう。自己分析から得た答えだ。NSさんは逆ではないか。SNSに投稿されるNSさんの絵を見て、そう思っていた。描画対象の形より色にまず注目して、先に着色し、その後で補助的に線描して対象に確定的な形を与えているのではないだろうか・・・。** NSさんにこのようなことを話すと、答えはYESだった。


先日、丸善で6冊まとめ買いして、『やばい源氏物語』大塚ひかり(ポプラ新書)『バーナード・リーチ日本絵日記』(講談社学術文庫)、そしてこの『教養としての建築入門』坂牛 卓(中公新書)と続けて読んできた。残り3冊、次は『人類と建築の歴史』藤森照信(ちくまプリマ―新書)を読もう。


 


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