透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「方丈記」鴨長明

2020-07-03 | H ぼくはこんな本を読んできた


復元された鴨長明の方丈の庵

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『方丈記』鴨長明(岩波文庫2001年第25刷

 鴨長明は下鴨神社の禰宜(神職)の家系に生まれ育ったという。この神社の境内に鴨長明の方丈の庵が復元されている。方丈記の詳細な記述をもとに、中村昌生氏の監修により復元されたという。ぼくはこの庵を2015年の12月に見ている。方丈の庵は簡単に分解することができ、好きなところに運ぶことができるシステムなので、プレファブのルーツとして取り上げられることもある。私も学生の時にこのような説明を聞いた(ような気がする。あるいはその後の学習の成果かも)。

方丈の方は正方形の方で四角という意味。丈は長さの単位で1丈は10尺、約3m。従って方丈は1辺が約3mの正方形の意。方丈記はこのサイズの庵で書かれたエッセイ。

**ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとゞまりたるためしなし。世中にある人と栖と、又かくのごとし。** この書き出しに長明の無常観が端的に表現されている。


 


「アポロンの島」小川国夫

2020-07-03 | H ぼくはこんな本を読んできた

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■『アポロンの島』小川国夫(角川文庫1975年6版)も、倉田百三の『出家とその弟子』と同じく学生のときに読んだ本。だが、この本は青春の思い出を負うてはいない。

減冊後に書棚に並ぶ文庫は20代で読んだものが多い。なぜだろう・・・。

歳をとると昔のことを懐かしく思う傾向が強くなるのかもしれない。そういえば未来より過去を語ることの方が多くなったように思う。追憶に生きる、か・・・。

解説文から引く。**小川国夫の文学の特質は、すべて、この『アポロンの島』にその原型があり、埋れた鉱石のかがやきを放っている。その言語、その思想が一体となって、従来の日本文学に少なかった形而上的な文学をつくりあげている。(後略)**