みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

川瀬巴水展へ

2006年10月02日 | 絵・写真・美術館
昨日は、かわら美術館(愛知県高浜市)の川瀬巴水展へ。
川瀬巴水(かわせはすい)は大正・昭和の風景版画家。
静かで、おだやかで、美しい日本の風景の数々。あぁ、日本ってこんなに美しいんだなぁと素直に感じられる。

巴水自身、芭蕉のように旅を愛して、全国を旅して回ったのだ。その土地、その土地で触れた美しい風景を、なんとかして多くの人に伝えたいという温かい人柄が、絵にも反映されている。一つ一つの絵が、一遍の詩か俳句のように、心に染みとおってくるものがある。

どの版画も、構図の美しさは一級だと思う。画家というのは、自然の中に潜んでいるリズムや美しさをうまく見つけて、抜き出してくる天才だと思う。

 
   荒川の月(赤羽)                   田子之浦之夕

ほとんど外れというものがない巴水の作品のなかで、とりわけ心惹かれるのは、ぽつりんと人物が描かれている作品だろうか。その多くは後姿で、美しい自然の中にほんとうにうまく溶け込みつつ、しみじみとした風情だ。人がいることで、景色はより美しさを増すようにも思う。自然との共生の一つのお手本のようにも思った。

それに人以外にも、建物やら、電信柱や、その他もろもろの雑多な人工物も、ほんとうにうまく自然と調和しているのだ。こういう風景画にして美しいうちは、自然と人間は、いい関係を保ってるんだと思う。現代の高層ビルは美しい風景画になり得るのかな?ならないとしたら、やっぱり何かが間違っているのかも?

版画という形式は、色使い、細かい描写等で、自由に描ける絵画に比べると、制約が多い。使える色の数は限られて、板を彫る必要があるから、ある程度の省略も求められる。そういう束縛の多い形式というのは、ピアノでいうと古典派の音楽に通じるものがあるように思う。形式美というのかな?規則、形式の束縛があるからこそ、モーツァルトの音楽や巴水の版画も魅力的なような・・・。

川瀬巴水、ほんとうに好きだ。今回は久しぶりに図録も購入した。半年前、川瀬巴水を知ったのは、ほんとうに素晴らしい出会いだったなぁ。

巴水の版画はこちらで、いろいろ見られますね。
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