タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

3連休は3連直

2018-07-18 21:17:27 | 産科
3連休は暑かったでしょう?
私は土日は外来、祝日は1日、新生児蘇生法の講習会に行ってきました。
さらに昨日から今日にかけて赤ちゃんも3人生まれ、休む間も無く頑張っていますよ。

県立柏原病院の小児科の岡本先生のご厚意により、講習会に参加させていただきました。
しかも私が参加できるように、祝日を選んでくらさったというわけです。
ちょっと嬉しいような悲しいような。
ですが岡本先生もわざわざ貴重な休日をご苦労さまでした。
今年、奥さんがタマル産で初出産されたのですよね。
しかもこのブログを読まれているそうですからね。

それにしても、しょっちゅう練習しておかないと、いざという時に役に立ちません。
タマル産でも毎年、勉強会に合わせて、同じような練習をしているのですよ。
写真の赤ちゃんは、よくできた人形ですから、心配しないでくださいね。
この人形で、蘇生や気管挿管、薬物投与なんかを練習します。

参加者は15人くらいだったでしょうか。
柏原の研修医の先生方も参加されていましたよ。
受講生の小児科の看護師さんはタマル産で3人産まれた方です。
インストラクターの看護師さんも、以前県立塚口病院時代に働いた仲間でした。
ということでけっこう仲間内の会でしたね。

関係ないのですが、タマル産でお産の記念品としてお渡ししている「うぶ声カード」の話になって、
時間が経過すると電池が切れて聞けなくなるね、とか。
でもね、電池を交換するとまた聞けるのですよ。
台紙から剥がさないと交換できませんけれど。

それと、以前はビデオテープも記念品として作成していたのですよ。
VHSですが、これも見れないらしく、
カメラ屋さんやネットで、DVDに変換してもらえますからね。
私なんて、よく自分で変換していますが。

話が逸れました。
生まれた時に赤ちゃんに蘇生をしないといけないのは、なんと15%も有るのだそうです。
いつもは気にも留めず、刺激したりタオルで拭ったり、
背中をマッサージしたり、足の裏を叩いたりしていますが、
自宅で生まれたりして、もしこれらの処置をしなかったなら、15%は生命に関わるということですよ。
逆に言うと、蘇生処置さえ知っていれば、99%の赤ちゃんは救えるのです。

そして岡本先生が強調されていた蘇生処置の重要な点は、
初期蘇生が成功しなかったなら、60秒以内に、蘇生バッグで人工呼吸をすることだそうです。
これに続いて、心臓マッサージや気管挿管と続くのですが、
とりあえず、蘇生バッグさえ、医師でなく助産師さんや看護師さんでも、ためらわなければ、救える生命は多いということでしたよ。

まあ、ここまでが基本的なお話です。
ここで終わっておけば良いのでしょうが、どうも私は考察してしまう癖が有ります。

大きな病院で働いていると、胎児の心音が落ちれば緊急で帝王切開して、
小児科医も同席して、新生児仮死に備えて待機するわけです。
だって帝王切開だと、それだけで赤ちゃんへのリスクが上がりますからね。
それは予定でする帝王切開だってそうなのです。
普通に経膣分娩で生まれてきた赤ちゃんの方が、ずっと赤ちゃんは元気で生まれるのですよ。

だから一番の赤ちゃんが元気に生まれてくる秘訣は、なるべく帝王切開をしないことなのです。
ですが病院では医師や助産師が役割分担をしているので、
しかも3交代や2交代で働いていますから、責任感が薄れてしまうのものです。
それは私も若い頃の経験で知っているのです。
だから帝王切開がもっとも安全な方法だと勘違いしてしまうのですね。

私が産婦人科として開業したのは、まさにそこなのですよね。
新生児蘇生の練習は確かに重要なのですが、
それよりもまず帝王切開にならないような分娩方法をマスターすることの方が先なのです。

それと「後医は名医」と言います。
産婦人科医や、開業医は前医に当たります。
小児科医は後医であり、大きな病院の医師も後医なのです。
前医は何かとストレスが高いものなのですよ。
それを喜びとするなんて、マゾみたいな性格でなければいけませんね。

そうそう、今日2人目に生まれた赤ちゃんもへその緒が強く首に巻いていて、
他院なら帝王切開になっていたことでしょう。
でもね、タマル産だから無事に生まれたのですよ。
もちろん蘇生処置も必要有りませんでした。
それは誇張でも何でもないのです。
重要なのは、うぶ声カードや食事がおいしいことではなくて、
赤ちゃんが元気に生まれてきてくれることですからね。

クレオパトラも好んだデーツ

2018-07-13 21:30:55 | つれづれ
我が家の初孫の生後2ヶ月の写真です。
いろいろとポーズを取らせれているようですよ。
普段は大阪に住んでいるので、あまり会えないのですけれどね。
こうして写真は毎日のように送られてくるので、親孝行な娘です。
自分が親になって初めて、親の気持ちが分かるようになるものでしょうね。

タマル産の外来を初めて受診された女性に、「Her Story」(ハーストーリー)という月刊誌をお渡ししています。
雑誌コーナーにも1年分を置いてありますので、ぜひお読みくださいね。
けっこう興味深い話が載っていたりします。

話だけではなくて、実際に日本への勉強目的の留学生への支援や、
発展途上国の子供たちへの里親制度など、いろんな活動をされています。
私も少し協力していて、今月も姫路で行われる外国人留学生の弁論大会への協賛なんかをしているのですよ。
先月は宝塚でも有りましたけれどね。

たどたどしい日本語ながら、日本で学んだこと、帰ってから自分の国で活かしたいことなどを熱く語ってくれるのですよ。
そんな情熱はすっかり忘れてしまっていませんか?
そういう方には、パワーがもらえるかもしれませんね。

その今月の7月号の誌面に、おもしろい記事を発見しましたので、転載してみましょう。

クレオパトラも好んだナツメヤシの果実・デーツ、という見出しです。
副題としてね、古代から栽培されてきたので、聖書やコーランにも登場し、
「生命の樹」のモデルともされている、と有ったのですよ。

ここがポイントなのですが、輸入本も含めて聖地の樹に関する本は、けっこう読み漁っていたのですが、
なかなか生命の樹のモデルが何かとは書かれていなかったのです。
それがナツメヤシと生命の樹が結びつけられていたので、興味を引いたというわけです。
でもね、おしいですが、ちょっと違うと思うのですよ。

エデンの園では、アダムが理想としたのが「生命の樹」で、
エバが理想としたのが、「善悪を知る樹」なのです。
エバはその善悪を知る樹から、取ってはダメだと言われていたのに、その実を取って食べたのです。
悪いことをしたのですね。
エバも大人になって、善悪の分別が分かるようになれば、おそらく食べても怒られなかったのです。
善悪を知る樹はだから、エバの象徴であり、多産の象徴のような、
実がたわわになる樹のはずなのです。
それに対して、アダムが理想とした樹は、まっすぐに天に伸びる、
レバノン杉であったでしょうね。
まあ、その話は何度もしましたっけ。

それで結論として、ナツメヤシは「善悪を知る樹」のモデルともされている、と書いてほしかったのです。
ちなみにナツメヤシは、タマルとも言い、女の子に付ける名前なのです。
聖書にはユダの嫁としてタマルという女性が出てきますよ。
このへんは深い話なので、また次回に。

ナツメヤシの果実は、デーツと呼ばれ、栄養価が高く、
ナツメヤシの実1つと、ラクダのミルクをコップ1杯飲めば、1日分の栄養が取れるそうです。
でもここでも、ラクダよりヤギの乳がオススメです。
そしてオリバーのお好み焼きソースに、内容物として、ナツメヤシと書かれているのをご存知ですか?お菓子などにも入っているのですよ。

種はラクダのエサに、タネから取れる油は油として使われ、
葉はカゴなどになり、樹液はハチミツのようで、瓶詰めで売られています。
以前、中東の平和活動に日本から団体で行かれて、
おみやげにこのナツメヤシの瓶詰めを頂いたことが有るのです。

イスラム教徒とユダヤ教徒が同じ聖地なものですから、奪い合いが起こるのですが、
和解のための大行進が行われたのですよね。
今はまたその関係が逆行しているようですが、
ナツメヤシ(タマル)の蜜で、近い将来に甘い心で解決できれば良いですね。

よくタマルという名前の由来を聞かれますが、
平和を愛する女性の名前だ、と覚えておいてくださいね。
そして(ヤギの)乳と(ナツメヤシの)蜜の流れる地が、神様から約束された理想の世界なのです。



卵管通気テストで何が分かる?

2018-07-11 21:18:12 | 不妊症
久しぶりに不妊症の話題です。
先日、豊岡病院で不妊治療を受けられているというカップルが来院され、
子宮卵管造影検査のことを質問されていかれたのですよ。
そうですね、タマル産より北の方では、不妊治療をしている施設が無いのですから困ったものですね。

子宮卵管造影という検査は、子宮の中に造影剤を通して、その先の卵管までの通り具合を見るものです。
この造影剤には大きくは2種類有って、油性と水性です。
造影剤には、ヨードが含まれているので、甲状腺の働きに悪影響が有ると言われていて、
最近はあまりしない方向にあるのですよ。
ヨードがお腹の中に蓄積して、半年間くらい、かえって妊娠率が落ちるというものです。
ですが昔は普通にこの検査をしていて、この検査の後に妊娠することもよく有りましたから、
本当かどうかはもう少し検討が必要でしょうけれど。

それで卵管の通り具合を見るなら、通気テストがおすすめです。
放射線の被曝も無いし、ヨードも使わないし、卵管の動きまで検査できるのですから。
ところが豊岡病院ではこの検査はしていないようでしたよ。

今年になって、ある有名な病院で、通気テストの後に亡くなられた事件が報道されましたが、
あれは通常使う炭酸ガスでなく、なぜか空気を使用したとのことです。
炭酸ガスは二酸化炭素ですからすぐに血液に溶けますが、
空気は窒素ガスが主体ですから、血液に溶けませんからね。
血管に空気を入れると自殺が出来るくらいですから、なぜそんな事件が起こったのかは分かりません。
ということで通常は危険な検査ではありませんよ。

そこで上の写真を見てください。
タマル産で実際に受けられた方の一例です。
縦軸は炭酸ガスの注入圧力で、200mmHgまで圧力をかけることができるのです。
真ん中より下の80mmHgあたりで、上がったり下がったりしているでしょう?
同じ検査を続けて2回しているので、2つの山が有ります。
圧力をかけると上がり、卵管が通ると下がり、また閉まって圧が上昇し、を繰り返しています。
卵管って、イソギンチャクのように、閉じたり開いたりするのですね。

ところでイソギンチャクを見たことが有りますか?
私は以前、グッピーと一緒にイソギンチャクを飼っていたのです。
水槽に張り付いてユラユラ揺れるものだと思われるでしょう?
ところがびっくりしたことに、イソギンチャクって、動き回れるのですよ。
それもすごい勢いでね。飼うのはオススメしませんからね。


次に2つ目のグラフを見てもらいましょうか。
今度の女性では、圧が高いでしょう?
200mmHgの圧力をかけると、ようやく通過するのが分かります。
2回目は160くらい、3回目はやはり200くらいの力を加えないと通りませんでした。
そう、通過障害が有るようですね。
しかも通った後の卵管の動きも少し悪いようです。
癒着も疑われますね。
この間、聴診器をお腹に当てて、炭酸ガスの通過する音も左右で聞き分けるのですよ。

この2つ目のグラフの女性は、以前にクラミジア頚管炎という性感染症になられたことが有り、
治療後もこのように、通りが悪くなったりするのですね。
まったく詰まっているわけではないので、とりあえず保存的な治療を進め、
早い段階で、体外受精に移行した方が良さそうです。
うまく妊娠しても、よく子宮外妊娠になられるのは、このような卵管だからです。

あと、よく質問が有るのは、卵管の検査って、痛いですか?というものです。
でもね、検査中はそれほど痛くありません。
というのは、タマル産では、子宮の中に小さな2mLの風船を入れて、そこからガスを流すからです。
他院ではよく、子宮を2つの鉗子で挟んで、引っ張りながら検査をされるので、
痛かったりします。

また子宮卵管造影をしている施設では、放射線室で検査を受けるので、
事前に婦人科外来で、鉗子をかけておき、放射線室まで移動しないといけないところも有ります。
造影剤は粘稠で、量も多いですから、痛がられる方は多いですね。
それに子宮の入り口を少し開大させるので、その痛みも有って、
血圧が下がって、点滴をして昇圧させなければならないことも有りますしね。

結局、卵管通気テストで、タマル産方式では、それほど痛く有りません。
ただし家に帰ってから、夜くらいに、背中が重たくなります。
それは腹腔内にガスを入れると、排卵して腹腔に出血が溜まった時のように、
右肩に張りが見られるのです。
たいていは我慢できるくらいですが、たまにすごく痛んだという方は居られます。
そういう場合は横になれば和らぎますからね。

不妊症の検査は、1つとってみても、不安なことが多いですよね。
外来で、遠慮なく質問してくださってけっこうです。

もう1つ、ポイントを書くのを忘れていました。
よくマウスの実験では、子宮に炭酸ガスを通すと、それだけで子宮が妊娠したように大きくなります。
これを偽妊娠(ぎにんしん)と言います。
だから卵管通気テストの後に、自然に妊娠することが多いのはこのせいでしょう。
ついでに言うと、マウスの背中をさするだけで、同じように妊娠したような子宮になります。
人にも、愛撫が重要だということでしょうか。

大きな赤ちゃんを産むのは何が問題か

2018-07-09 21:09:21 | 産科
篠山市野中の大雅(たいが)くん、6月6日生まれ。
「おおらかに、雅らかに育ってください。
安産で良かったです。2人目で落ち着いて産めました。
綺麗な個室でゆっくり過ごせました。次も自然分娩がしたいです。」

そうそう、産むごとに楽になっていくでしょう?
3人は産まないと、その良さは分かりませんよね。
もちろん1人しか産まないという選択を否定するものでは有りませんよ。
ですが後にならないと、子を持つ有り難さは分かりませんからね。

ところで難産になるかどうか、というのはいつもお話するように、
経験上一番多いのはへその緒の問題です。
2番目は赤ちゃんが大きすぎることでしょう。
逆に早産などで小さ過ぎる時も生まれにくいのですが、それはまた次の機会に。

最近言われていることは、満期になったら、赤ちゃんの体重が過体重かどうか、もう一度評価した方が良いということです。
とくにただ大きそうだと漠然と見ずに、
頭囲より胴回りが極端に大きくないかチェックしておきなさいというものです。
普通はね、頭回りの方がお腹回りより大きいのですよ。
ところが生まれにくい赤ちゃんは、腹囲の方がずっと大きいのです。

生まれにくいって、どういうことかと言えば、肩甲難産と言うものです。
赤ちゃんは、頭が出ると、胴体はスルスルッと続けて出てくるものなのです。
ところが頭がやっと出ても、胴体が出てこないのですよ。
とくに肩周りが引っ掛かって、お腹を押してもウンともスンとも言わないことが有ります。
そんな時はこちらの心臓がバクバクするのですよね。

赤ちゃんが大きそうかどうか、を見分けるのは簡単です。
お母さんが妊娠中に太ったかどうか、ですからね。
ただ、それほど太っていないのに胎児が大きい時は、糖尿病という可能性も有ります。
若い女性ではまだまだ少ないですが、最近は高齢での妊娠が増えましたから、
糖尿病に近い女性も増えました。

妊娠中の治療と言えば、食餌療法か、インスリンの注射しか有りません。
飲み薬は妊娠中は使えないからです。
インスリンともなれば、毎日自分で注射しないといけないのですよ。
とくに1人目が4キロもあるような赤ちゃんの場合は、
産後に糖尿病かどうかの検査をして、2人目に備えてインスリン治療を始めるべきです。

今日の最後に、赤ちゃんが大き過ぎると何が怖いかお話して、怖がらせて締めましょう。
まずお母さんには、難産になると帝王切開になる確率が上がります。
6月は1人だけ帝王切開をしたのですが、胎児が大き過ぎて、しかもへその緒が首に巻いていたからです。
一度帝王切開をすると、次も帝王切開になる確率が高まります。
反復して帝王切開をすると、出血が増えたり、癒着胎盤になったりで、母体の合併症が急上昇します。

赤ちゃんにとってはどうかと言うと、先ほど説明した肩甲難産になると、
生まれるのに時間がかかると、仮死になって未熟児センターに搬送され、
場合によっては障害が残ることも有ります。
もちろん、亡くなってしまう可能性だってあります。
肩甲難産でもうまく生まれても、母体に深い傷ができると、これまた大出血が起こります。
膣って、とても充血していますから、びっくりするほど血が噴き出すのですからね。

赤ちゃんが大きくても、普通に生まれたら、なんともないと思われるでしょう?
ところが電解質異常が起こったり、低血糖でケイレンを起こしたり、
呼吸窮迫症候群という病気を起こすことが有るのです。
そればかりでなく、赤ちゃんが成長しても、肥満や糖尿病になりやすいというリスクも有るのですよ。

でもね、結局のところ生まれる少し前に分かっても、仕方ないとも言えますね。
妊娠中期までに予想を立てなさい、ということになっていますが、
とりあえず1人目がどのくらいだったか、ということが参考になるでしょう。
それでも、大きな赤ちゃんを産んでも、
みなさん、2人目の時にはすっかり教訓を活かされないのですからね。

タマル産では、大雨が過ぎて、今年植えたハマナスの花が咲いてきました。
ピンクの花を注文したのですが、白い花が咲きました。
業者の手違いだったようですが、まあそれも愛嬌ですか。

お産での輸血のお話

2018-07-06 21:28:49 | 産科
篠山市大沢の晴瀬(はるせ)くん、6月6日生まれ。
「健康に育ってください。
お産は思っていたより、しんどかったです。
みなさん優しく、お料理もおいしくて楽しみでした。」

6月は晴天に生まれたのかな。
それに比べて、ここ連日、大雨ですね。
子供たちはお休みかな。外出には気をつけてくださいね。

さて、前回のこのブログでは、特殊な血液型のお母さんから生まれた赤ちゃんのお話でした。
お母さんが非常にめずらしい血液型でも、赤ちゃんは普通の血液型のことが多いのです。
すると、赤ちゃんを産む度に抗体というものができて、その抗体が移行するので、
次の赤ちゃんには、血液が溶けて黄疸が出やすいという話をしました。

基本的にJraマイナスという血液型の赤ちゃんは、黄疸は普通の子と比較してそれほど強く出ません。
それは日産婦の資料なのですが、それでも大阪府立母子保健総合医療センターの報告では、
10人中7人は問題無かったのですが、3人には新生児黄疸の治療を要したそうです。
1人は重症で、妊娠中にお腹の中の胎児に輸血し、
1人は生まれてから交換輸血をし、
もう1人は光線療法を要したようです。
だから注意はしておかなくてはいけないようです。
参考として、妊娠の胎児への輸血は、胎児のお腹に輸血するのですよ。

日産婦の資料は私もよく調べるのですが、
もっとオリジナルの文献まで調べようとすると時間がかかるのですよね。
ところが今回の資料、日赤の学術班の担当者さんが調べて、わざわざ送ってくださったのですよね。

今までタマル産では輸血をできませんでした。
お産で大出血が起こった場合は、高次医療機関に搬送していたからです。
と言っても、この20年近くで、片手の指で数えられるくらいのお母さんだけです。
タマル産では輸血まですることはすごくめずらしいのですよ。

他の産科医療機関では、その何倍もの妊婦さんに輸血をされます。
それはなぜかと言えば、他院では帝王切開が多いからです。
みなさんは帝王切開の方が安全だと考えておられるでしょうが、
帝王切開の方がお母さんにとってはずっとリスクが高いのですよ。
先日の兵庫県産婦人科学会の西神戸医療センターさんの発表でも、
過去に輸血を要した方の半分ほどは帝王切開がらみだったとされていますからね。

それで今回、日赤さんと関わりを持ったついでに、
タマル産でも輸血ができるかどうか検討してみたのです。
簡単に言うと、しようと思えばできます。
日赤への登録番号が登録されたので、電話をかければ緊急で運んでもらえることになりました。
よく町で見ませんか?
赤十字のマークを付けた白い車で、たまにサイレンを鳴らして走っている車ですよ。

でもね、輸血っていうのはね、血液だけではダメなのですよ。
まず患者さんの血液と供血の血液で、輸血をしたら問題がおこらないかという、
クロスマッチ検査をしないといけません。
頻繁に患者さんの貧血の検査を緊急で何度もして、過不足も検討します。
ちょっと少なめに輸血するのがコツで、過剰に輸血するとまた問題が起こりますしね。

まあ、とても人手のかかる操作なのですよ。
私も麻酔科に何年も居て、輸血もたびたびする側でしたから、その苦労を知っているのです。
産婦人科的な処置をしながら、輸血までは1人ではできないのですよ。
結局、輸血までしようと思えば、母体搬送が一番です。
だいたい夜中でも神戸から1時間かけて血液が運ばれてくるのですから、
近隣の高次医療機関に母体搬送した方がずっと早いし、人手も確保できますからね。

それでも日赤の血液センターと親しくしておくのは良いことではありませんか。
特殊な血液型の検査まで、普通の検査センターではできないようなことも、
格安でしてもらえます。
おまけに喜んで文献まで調べてもらえるのです。
さすがは公的な機関ですね。
丹波市で、無くなるのは寂しいですね。