タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

膀胱炎の検査と治療

2018-07-27 21:01:50 | 婦人科
今日は、前回の続きからです。

写真は、今日外来を受診された方の膣のおりものの顕微鏡写真です。
顕微鏡で観ると、こんな感じで、棒状のものとブツブツの部分が見えますね。
これはカンジダという糸状のカビなのです。
ブツブツは胞子(ほうし)と言って、飛んでいってまた増殖する部分です。

毎年なられるのに、懲りられないのですよ。
あれほど風邪に抗生物質は飲んではいけないと言ったのに。
だって、風邪で抗生物質を飲むと早く治るのです、と言われるのです。
いえいえ、飲まなくても治ったのですよ。
飲むから、こんな風にカンジダ膣炎になってしまったのですからね。
前回のブログを読まれた方なら、もう分かりますね。

今日はもう1つ、新しいことを付け加えておきましょう。
膀胱炎のお話です。

女性でも膀胱炎になると、婦人科だけでなく、泌尿器科に行かれることも有ります。
ですが泌尿器科では検査はまずされません。
もちろん内診も無いのです。
抗生物質を処方されて終わりでしょう。
まあ、診察が嫌いだという女性には、それでも良いのかもしれませんが。

膀胱炎の検査では、まず検尿をしますね。
尿蛋白や尿糖、尿潜血だけでは、膀胱炎かどうか分かりません。
できれば尿沈渣と言って、尿を遠心機にかけて、沈殿物を顕微鏡で観るのが確実です。
でも時間がかかりますね。

それで簡易検査としては、尿カタラーゼ検査というのが有ります。
尿に過酸化水素という酸化剤をポトポトと入れると、泡がたってきます。
泡が出れば膀胱炎ですから、これなら誰でもできますよ。
泡の実態は酸素です。
膀胱炎になれば白血球が寄ってきて細菌を食べます。
細菌や白血球はカタラーゼという酵素を持っているので、過酸化酸素によって還元され、
酸素のブクブクを出すという仕組みです。

でもね、このウロバブルテストというキット、販売中止になったのです。
だいたい保険の点数も廃止になったのです。
それでタマル産では、仕方がないので代替の検査として、
カタラーゼテストを試験紙でできる高機能のテステープを使用しています。

紙コップの尿に、テステープを浸けるだけなのですが、
白血球の数やカタラーゼテストが陽性かどうかまで分かりますから、短時間で判明するのですよ。

さらに膀胱や膣には常在菌以外の細菌は居ないのですが、
これを直接検査しておくことも重要です。
性感染症が有ることも多いので、いきなり抗生物質ではなく、
検査しておかないと、彼氏やご主人も治療する機会を失い、
何回でも膀胱炎や膣炎になってしまいますからね。

だから女性が膀胱炎になったら、泌尿器科より婦人科を受診した方が良いのですよ。
覚えておいてくださいね。

それともう1つ、覚えておいていただきたいのは、
膀胱炎に対して今までよく処方されてきた抗菌剤で、
フルオロキノロン系という薬は、効果よりも副作用の方が大きいので、
膀胱炎や気管支炎では使用しないようにと、アメリカのFDAが警告を出したようです。

フルオロキノロン系にはレボフロキサシンやシプロキサシン、オフロキサシンなどが有ります。
副作用としては、低血糖性昏睡や、神経過敏や記憶障害などの精神神経系の症状です。
これで、膀胱炎に使える薬が少なくなりました。
性感染症であるクラミジア頸管炎などにも、よく使われてきた薬なのですが。
これからは耐性菌の問題など、よほどの時だけ使用することにしておきましょう。