タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

お産での輸血のお話

2018-07-06 21:28:49 | 産科
篠山市大沢の晴瀬(はるせ)くん、6月6日生まれ。
「健康に育ってください。
お産は思っていたより、しんどかったです。
みなさん優しく、お料理もおいしくて楽しみでした。」

6月は晴天に生まれたのかな。
それに比べて、ここ連日、大雨ですね。
子供たちはお休みかな。外出には気をつけてくださいね。

さて、前回のこのブログでは、特殊な血液型のお母さんから生まれた赤ちゃんのお話でした。
お母さんが非常にめずらしい血液型でも、赤ちゃんは普通の血液型のことが多いのです。
すると、赤ちゃんを産む度に抗体というものができて、その抗体が移行するので、
次の赤ちゃんには、血液が溶けて黄疸が出やすいという話をしました。

基本的にJraマイナスという血液型の赤ちゃんは、黄疸は普通の子と比較してそれほど強く出ません。
それは日産婦の資料なのですが、それでも大阪府立母子保健総合医療センターの報告では、
10人中7人は問題無かったのですが、3人には新生児黄疸の治療を要したそうです。
1人は重症で、妊娠中にお腹の中の胎児に輸血し、
1人は生まれてから交換輸血をし、
もう1人は光線療法を要したようです。
だから注意はしておかなくてはいけないようです。
参考として、妊娠の胎児への輸血は、胎児のお腹に輸血するのですよ。

日産婦の資料は私もよく調べるのですが、
もっとオリジナルの文献まで調べようとすると時間がかかるのですよね。
ところが今回の資料、日赤の学術班の担当者さんが調べて、わざわざ送ってくださったのですよね。

今までタマル産では輸血をできませんでした。
お産で大出血が起こった場合は、高次医療機関に搬送していたからです。
と言っても、この20年近くで、片手の指で数えられるくらいのお母さんだけです。
タマル産では輸血まですることはすごくめずらしいのですよ。

他の産科医療機関では、その何倍もの妊婦さんに輸血をされます。
それはなぜかと言えば、他院では帝王切開が多いからです。
みなさんは帝王切開の方が安全だと考えておられるでしょうが、
帝王切開の方がお母さんにとってはずっとリスクが高いのですよ。
先日の兵庫県産婦人科学会の西神戸医療センターさんの発表でも、
過去に輸血を要した方の半分ほどは帝王切開がらみだったとされていますからね。

それで今回、日赤さんと関わりを持ったついでに、
タマル産でも輸血ができるかどうか検討してみたのです。
簡単に言うと、しようと思えばできます。
日赤への登録番号が登録されたので、電話をかければ緊急で運んでもらえることになりました。
よく町で見ませんか?
赤十字のマークを付けた白い車で、たまにサイレンを鳴らして走っている車ですよ。

でもね、輸血っていうのはね、血液だけではダメなのですよ。
まず患者さんの血液と供血の血液で、輸血をしたら問題がおこらないかという、
クロスマッチ検査をしないといけません。
頻繁に患者さんの貧血の検査を緊急で何度もして、過不足も検討します。
ちょっと少なめに輸血するのがコツで、過剰に輸血するとまた問題が起こりますしね。

まあ、とても人手のかかる操作なのですよ。
私も麻酔科に何年も居て、輸血もたびたびする側でしたから、その苦労を知っているのです。
産婦人科的な処置をしながら、輸血までは1人ではできないのですよ。
結局、輸血までしようと思えば、母体搬送が一番です。
だいたい夜中でも神戸から1時間かけて血液が運ばれてくるのですから、
近隣の高次医療機関に母体搬送した方がずっと早いし、人手も確保できますからね。

それでも日赤の血液センターと親しくしておくのは良いことではありませんか。
特殊な血液型の検査まで、普通の検査センターではできないようなことも、
格安でしてもらえます。
おまけに喜んで文献まで調べてもらえるのです。
さすがは公的な機関ですね。
丹波市で、無くなるのは寂しいですね。