タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

11月はSIDS対策月間です

2017-11-24 21:31:03 | 産科
いよいよクリスマスまで1ヶ月ですね。
今日、タマル産にも、ツリーを飾ってみました。
夜診に来られると、なお幻想的ですよ。

勤労感謝の日は、お父さんに感謝しましたか?
今は女性も働く時代ですから、お母さんも感謝してもらいましたか?

私は、3日がかりのお産を担当していました。
2泊3日の間、初めてのお産の妊婦さんに寄り添っていたのです。
赤ちゃんが大きくて、しかもへその緒が首に巻いていて、
さらには妊娠高血圧で、陣痛促進剤の使用も注意する必要が有りました。
はっきり言って、他院では帝王切開になっていたことでしょう。
久しぶりに会陰切開はしましたが、無事に元気に生まれてくれましたよ。

最近のニュースの論調は、クリニックでのお産はリスクが高く、
センター病院では医師の数が多いのでリスクが低いといったものです。
けれど、そもそも同じお産でも、クリニックで産むと帝王切開自体が少なくなります。
ですからクリニックでのお産は、元来のリスクそのものが小さくなるのですよ。
緊急帝王切開では、母体死亡率が10倍も高いですからね。

だいたいお産で生命を落とすなんて、日本では世界一低くて、1万人に1人以下です。
あまり心配ばかりしていると、かえって危険な目に会ってしまうのです。

さて今日は、重い話題ですが、SIDSのお話をしましょう。
SIDSとは乳幼児突然死症候群のことです。
毎年11月は、SIDS対策月間だからです。

まず定義ですが、それまでの健康状態および既往症からその死亡が予測できず、
しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない、
原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群です。

6千から7千人に1人という統計です。
私も開業してからそれに近い赤ちゃんを取り上げてきたので、
ちょうど1人、そういう経験をしました。

かなり以前になりますが、5人目の赤ちゃんを生まれたお母さんだったと思います。
身の回りのことがあまりできないのですよ。
整頓するとかがです。
積極的に5人産むお母さんも居られますが、
なんとなくたくさん産んでしまうお母さんも居られます。
後者の方だったのですね。
市の保健師さんも家庭訪問されていて、普段の状況は把握されていたのですけれどね。

お布団の中で亡くなっていたのです。
うつぶせ寝だったかどうかは把握していません。
うつぶせ寝の方が、SIDSの発生率はずっと高いのです。
定義では原因不明の場合となっていますが、
うつぶせ寝と関係するということは、原因も予想できるということかもしれませんね。

もちろんお母さんに悪意は無いのです。
ですが、心に傷を負ってしまいますよね。
こういう場合は、解剖をすすめることになっています。
SIDSの場合は、警察への届出も要りますし、法医解剖になることもあれば、
なんらかの病気の疑いがあれば、病理解剖になります。

SIDSを疑えば、厚生労働省のSIDS研究班のホームページに、
問診チェックリストというのが掲載されています。
これは、誰かに原因を求めるという類のものではありません。
医学的に、SIDSの赤ちゃんを減らすための取り組みです。

現に、研究成果により、うつぶせ寝がダメだということがはっきりしたので、
小さい子は、病院や保育園でもうつぶせ寝にはしなくなったと思いますよ。
少しでも原因を取り除いて、こどもの事故を防ぐことが目的なのです。