タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

トーラック?ブイバック?

2017-11-10 21:35:51 | 産科
三田市の瑞(すい)ちゃん、10月7日生まれ。
「生き生きと充実した人生を送り、優しくて愛嬌の有る子に育ってください。
下から産んだのが初めてで衝撃的でしたが、とても感動しました。
夕食後のスイーツとハーブティーに癒されました。」

妊娠中は、甘いものは控えていたでしょうからね。
1人目の出産は、他院で、しかも帝王切開だったのですよね。
だから下から産む、と表現されているのですよ。

私はテレビは見ませんが、先週のコウノドリというドラマの主題が、
この既往帝王切開の話題だった、ということは知っていますよ。
大阪の病院の産婦人科医がモデルなのですよね。
前回のお産で帝王切開だったお母さんが、経膣的に産みたいと考えるのに、
どう対応するかという話だったのでしょう?

最近の病院では、前回に帝王切開をしているお母さんは、次もまず帝王切開になります。
みなさんはそれが当たり前だと思われているでしょうが、実はこの20年弱のことなのですよ。
それまではむしろ、帝王切開していたって、下から産む方が当たり前の時代でした。

私は京大病院、天理よろづ相談所病院、兵庫県立塚口病院で働いてきました。
非常勤では10箇所以上の病院でも働いてきましたよ。
だから世の産婦人科のだいたいのことは知っています。

京大と天理では、前回帝王切開でも次は下から、というのが基本でした。
逆に塚口では、次も帝王切開、だったのです。
まったく病院によって方針が違いますね。

では世界的にはどうなっているのでしょうか?
まずWHO(世界保健機構)は、帝王切開していても次は下から産みなさい、ということになっているのですよ。
意外でしたか?
これはアメリカなどでは、帝王切開が非常に多くなっているので、警鐘を鳴らしているという意味合いも有ります。
それに世の中の人は、帝王切開が絶対に安全だと考えがちですが、
帝王切開後に、肺血栓症で、突然亡くなってしまうリスクも有るのですよね。

ただし下から産む場合のデメリットも有ります。
子宮が破裂してしまうことです。
ある報告では、帝王切開した女性が経膣分娩にトライした場合、
100回のうち1回の頻度で子宮破裂が起こるとしています。
私は100回以上はトライしていますが、破裂しなかったのは、単に運が良かっただけかもしれません。
先の塚口病院で経膣分娩にトライしないのは、昔、子宮破裂が有ったからだそうです。

ですから、帝王切開したことの有る女性が、安全だけを考えるなら、
もう赤ちゃんを産まないことです。
これが究極の安全策ですよ。
そんなことを言うと、非難されそうですけれどね。
ですが、妊娠するということは、自分の生命を賭けているということなのです。
それほど決意して妊娠していただきたいものです。
でも、そこまでは考えていませんか?

それでもし妊娠してしまったのなら、迷わず帝王切開すると良いです。
そうすると誰も裁判に巻き込まれません。
裁判に訴えるなど、訴える方も、訴えられる方も無駄な時間を過ごしてしまいますからね。

ですが、どうしても経膣的に産みたい、という女性だけ、産まれてみてはどうでしょうか。
それならば、私も医師生命を賭けて、お手伝いしますよ。


P.S. 報道で知りました。
タイで交通事故で亡くなられたのは、成本先生だったのですね。
しかも愛する娘さんとご一緒に。
旧の石田病院、現在のなりもとレディースホスピタル。
私が体外受精の手技を手取り足取り教えていただいた先生です。
京大で体外受精を始められた先駆的なグループでした。
先生にはたいへんお世話になりました。
ご冥福をお祈りいたします。