歌番号 1260
詞書 御返し
詠人 延喜御製
原文 徒良幾遠者 川祢奈幾毛乃止 於毛飛川々 飛佐之幾己止遠 多乃三也利世奴
和歌 つらきをは つねなきものと おもひつつ ひさしきことを たのみやはせぬ
読下 つらきをはつねなき物と思ひつつひさしき事をたのみやはせぬ
解釈 辛いことは常に移り変わり定め無きものと思いながら、どうして、私の貴女への心配りが久しくあることを、信頼していないのですか。
歌番号 1261 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 伊勢
原文 和礼己曽者 仁久々毛安良免 和可也止乃 者奈美尓多尓毛 幾美可幾万左奴
和歌 われこそは にくくもあらめ わかやとの はなみにたにも きみかきまさぬ
読下 我こそはにくくもあらめわかやとの花見にたにも君かきまさぬ
解釈 私は、貴方にとって、きっとつれない女なのでしょう、私の屋敷の花見にだけでもと思うのに、貴方がやって来ません。
歌番号 1262 拾遺抄記載
詞書 つつむこと侍りける女の返事をせすのみ侍りけれは、一条摂政、いはみかたといひつかはしたりけれは
詠人 よみ人しらす
原文 伊者美可多 奈尓可八川良幾 徒良可良八 宇良三可天良尓 幾天毛美与可之
和歌 いはみかた なにかはつらき つらからは うらみかてらに きてもみよかし
読下 いはみかたなにかはつらきつらからは怨みかてらにきても見よかし
解釈 石見の潟、その言葉の響きではないが、言わみの方よ、どうして、それほどにつれない態度を取るのか、つれない態度を取るのなら、浦を見るではありませんが、恨みがてらに貴女の許に参上して拝顔しましょう。
歌番号 1263 拾遺抄記載
詞書 一条摂政下らふに侍りける時、承香殿女御に侍りける女にしのひて物いひ侍りけるに、さらになとひそといひて侍りけれは、ちきりし事ありしかはなといひつかはしたりけれは
詠人 本院侍従
原文 曽礼奈良奴 己止毛安利之遠 和寸礼子止 以比之者可利遠 美々尓止女个无
和歌 それならぬ こともありしを わすれねと いひしはかりを みみにとめけむ
読下 それならぬ事もありしをわすれねといひしはかりをみみにとめけん
解釈 貴方との契りことではない、色々なことがありましたが、私が、私のことを忘れてくださいと言った、その言葉だけを耳にとどめたのですか。(あれは、一夜の遊びだったのですか。)
歌番号 1264
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 美可利寸留 己満乃川万川久 安遠川々良 幾美己曽和礼者 保多之奈利个礼
和歌 みかりする こまのつまつく あをつつら きみこそわれは ほたしなりけれ
読下 みかりするこまのつまつくあをつつら君こそ我はほたしなりけれ
解釈 帝が狩りをする、その狩りの馬が躓く、青つづらのように、あなたは私の心の足かせのような存在です。
注意 ほだし:馬を束縛する綱ですが、ここでは拘束の比喩です。これを肯定的に取るか、否定的に取るか、受け手の感情です。