竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌3910から集歌3914まで

2022年12月06日 | 新訓 万葉集
集歌3910 珠尓奴久 安布知乎宅尓 宇恵多良婆 夜麻霍公鳥 可礼受許武可聞
訓読 珠に貫く楝(あふち)を家に植ゑたらば山霍公鳥(ほととぎす)離(か)れず来むかも
私訳 薬珠に貫く楝を家に植えたら、山ホトトギスは途切れることなくやって来るでしょう。
右、四月二日、大伴宿祢書持従奈良宅贈兄家持
左注 右は、四月二日に、大伴宿祢書持が奈良の宅より兄家持に贈れり。

橙橘初咲、霍公鳥飜嚶。對此時候、詎不暢志。因作三首短謌、以散欝結之緒耳
標訓 橙(だいだい)と橘(たちばな)が初めて咲き、霍公鳥(ほととぎす)の飜(かけ)り嚶(な)く。この時候に對(むか)ひて、詎(なん)ぞ志を暢(の)べざらむ。因りて三首の短謌を作りて、以ちて欝結(うつけつ)の緒(こころ)を散(さ)んずるのみ
集歌3911 安之比奇能 山邊尓乎礼婆 保登等藝須 木際多知久吉 奈可奴日波奈之
訓読 あしひきの山辺に居れば霍公鳥(ほととぎす)木の間立ちくき鳴かぬ日はなし
私訳 葦や檜の生える山辺に住んでいるとホトトギスが木々の間を潜り飛び鳴かない日はありません。

集歌3912 保登等藝須 奈尓乃情曽 多知花乃 多麻奴久月之 来鳴登餘牟流
訓読 霍公鳥(ほととぎす)何の心ぞ橘の珠貫く月し来鳴き響(とよ)むる
私訳 ホトトギスよ、どのような気持ちで橘の花を薬珠に貫く月にはやって来て声を鳴き響かせる。

集歌3913 保登等藝須 安不知能枝尓 由吉底居者 花波知良牟奈 珠登見流麻泥
訓読 霍公鳥(ほととぎす)楝(あふち)の枝に行きて居(ゐ)ば花は散らむな珠と見るまで
私訳 ホトトギスよ、楝の枝に飛び来て留っていると、花は散るだろうなあ。珠が紐が切れ飛び散るように。
右、四月三日、内舎人大伴宿祢家持、従久邇京報送弟書持
左注 右は、四月三日に、内舎人の大伴宿祢家持の久邇京より弟書持に報(こた)へ送れり

思霍公鳥謌一首 田口朝臣馬長作
標訓 霍公鳥(ほととぎす)を思(しの)ふ謌一首 田口朝臣馬長の作れり
集歌3914 保登等藝須 今之来鳴者 餘呂豆代尓 可多理都具倍久 所念可母
訓読 霍公鳥(ほととぎす)今し来鳴かば万代(よろづよ)に語り継ぐべく思ほゆるかも
私訳 ホトトギスよ。今、この時に飛び来て鳴いたなら万代までに語り継ぐべきものと思われるのに。
右、傳云、一時交遊集宴。此日此處霍公鳥不喧。仍作件謌、以陳思慕之意。但其宴所并年月未得詳審也
左注 右は、傳へて云はく「一時(あるとき)に交遊集宴せり。この日この處に霍公鳥は喧(な)かず。すなわち件(くだん)の謌を作り、以ちて思慕の意を陳べる。ただし其の宴(うたげ)の所并びに年月は未だ詳審(つまびらか)を得ず」なり。
コメント
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