竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌927から集歌931まで

2020年09月14日 | 新訓 万葉集
反謌一首
集歌九二七 
原文 足引之 山毛野毛 御狩人 得物矢手挟 散動而有所見
訓読 あしひきし山にも野にも御狩人(みかりひと)得物矢(さつや)手挾(たばさ)み散(さ)動(わ)きたり見ゆ
私訳 足を引きずるような険しい山にも野にも、御狩りに従う人々が手に得物や矢を持ち、あちらこちらを動き廻るのが見える。
左注 右、不審先後。但、以便故載於此歟。
注訓 右は、先後を審(つばび)らかにせず。ただ、便(たより)を以(もち)ての故にここに載せるか。

冬十月、幸于難波宮時、笠朝臣金村作謌一首并短謌
標訓 (神亀二年)冬十月に、難波宮に幸(いでま)しし時に、笠朝臣金村の作れる謌一首并せて短謌
集歌九二八 
原文 忍照 難波乃國者 葦垣乃 古郷跡 人皆之 念息而 都礼母無 有之間尓 續麻成 長柄之宮尓 真木柱 太高敷而 食國乎 治賜者 奥鳥 味經乃原尓 物部乃 八十伴雄者 廬為而 都成有 旅者安礼十方
訓読 押し照る 難波(なには)の国は 葦垣(あしかき)の 古(ふ)りにし郷(さと)と 人(ひと)皆(みな)し 思ひ息(やす)みて つれもなく ありし間(あひだ)に 続麻(うみを)なす 長柄(ながら)し宮に 真木柱(まきはしら) 太(ふと)高敷(たかし)きて 食国(をすくに)を 治めたまへば 沖つ鳥 味経(あじふ)の原に 物部(もののふ)の 八十伴(やそとも)し壮(を)は 廬(いほり)して 都(みやこ)成(な)したり 旅にはあれども
私訳 一面に光輝く難波の国は、葦で垣根を作るような古びた郷と人が皆、そのように思い忘れ去って、見向きもしない間に、紡いだ麻の糸が長いように長柄の宮に立派な柱を高々とお立てになり君臨なされて、御領土をお治めなさると、沖を飛ぶ味鴨が宿る味経の原に、立派な大王の廷臣の多くのつわものは、仮の宿りをして、さながら都の様をなした。旅ではあるのだが。

反謌二首
集歌九二九 
原文 荒野等丹 里者雖有 大王之 敷座時者 京師跡成宿
訓読 荒野(あらの)らに里はあれども大王(おほきみ)し敷きます時は京師(みやこ)となりぬ
私訳 荒野のような里ではあるが、大王が御出座しになるときは都となる。

集歌九三〇 
原文 海末通女 棚無小舟 榜出良之 客乃屋取尓 梶音所聞
訓読 海(あま)未通女(をとめ)棚無し小舟榜(こ)ぎ出(づ)らし旅の宿りに梶し音聞こゆ
私訳 漁師のうら若い娘女が、側舷もない小さな船を操って船出をするようだ、旅の宿りにその船を操る梶の音が聞こえる。

車持朝臣千年作謌一首并短謌
標訓 車持朝臣千年の作れる謌一首并せて短謌
集歌九三一 
原文 鯨魚取 濱邊乎清三 打靡 生玉藻尓 朝名寸二 千重浪縁 夕菜寸二 五百重浪因 邊津浪之 益敷布尓 月二異二 日日雖見 今耳二 秋足目八方 四良名美乃 五十開廻有 住吉能濱
訓読 鯨魚(いさな)取り 浜辺(はまへ)を清(きよ)み うち靡き 生(お)ふる玉藻に 朝凪に 千重(ちへ)浪(なみ)寄せ 夕凪に 五百重(いほへ)浪(なみ)寄す 辺(へ)つ浪し いやしくしくに 月に異(け)に 日に日に見とも 今のみに 飽き足(た)らめやも 白浪の い開(さ)き廻(めぐ)れる 住吉(すみのへ)の浜
私訳 鯨魚も取れると云う位の立派な海の浜辺が清らかで、波間に靡き生えている美しい藻に、朝凪に千重の浪が寄せ、夕凪に五百重の浪が寄せる、その岸辺に寄す浪が、次ぎ次ぎと寄せるように月を重ね、日々に見ていても、今このように見るだけで、見飽きるでしょうか。白波が花飛沫を咲かせている住吉の浜よ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする