竹取翁と万葉集のお勉強

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万葉集 集歌957から集歌961まで

2020年09月22日 | 新訓 万葉集
冬十一月、大宰官人等奉拜香椎廟訖退歸之時、馬駐于香椎浦各述作懐歌
帥大伴卿謌一首
標訓 (神亀五年)冬十一月、大宰の官人(くわんにん)等の香椎の廟(みや)を拜(をが)み奉(まつ)り訖(を)へて退(まか)り歸りし時に、馬を香椎の浦に駐(た)てて各(おのおの)懐(おもひ)を述べて作れる歌
帥大伴卿の謌一首
集歌九五七 
原文 去来兒等 香椎乃滷尓 白妙之 袖左倍所沾而 朝菜採手六
訓読 いざ子ども香椎(かしひ)の潟(かた)に白栲し袖さへ濡れに朝菜(あさな)採(つ)みてむ
私訳 さあ、そこの娘女たちが香椎の潟に白栲の袖までも濡らして、明日の朝食の菜を摘んでいるよ。

大貳小野老朝臣謌一首
標訓 大貳小野(おのの)老(おゆ)朝臣の謌一首
集歌九五八 
原文 時風 應吹成奴 香椎滷 潮干汭尓 玉藻苅而名
訓読 時風(ときつかぜ)吹くべくなりぬ香椎潟(かしひかた)潮干(しほひ)の浦に玉藻刈りにな
私訳 満潮を押し上げるような風が吹きそうな時間になるようだ、(娘女よ、早く)香椎の潟の潮が干いた入り江で玉藻を刈りなさい。

豊前守宇努首男人謌一首
標訓 豊前守宇努首(うののおびと)男人(をひと)の謌一首
集歌九五九 
原文 徃還 常尓我見之 香椎滷 従明日後尓波 見縁母奈思
訓読 往(い)き還(かへ)り常に我が見し香椎潟(かしひかた)明日(あす)ゆ後(のち)には見む縁(よし)もなし
私訳 香椎の廟への往き帰りに常に私が眺めていた香椎の潟を、明日からは後にはもう見ることもないのでしょう。

帥大伴卿遥思芳野離宮作謌一首
標訓 帥大伴卿の遥かに芳野の離宮(とつみや)を思(しの)ひて作れる謌一首
集歌九六〇 
原文 隼人乃 湍門乃磐母 年魚走 芳野之瀧之 尚不及家里
訓読 隼人(はやひと)の瀬戸(せと)の巌(いはほ)も年魚(あゆ)走る吉野し瀧(たぎ)しなほ及(し)かずけり
私訳 この早鞆の瀬戸の磯の景色も、鮎が水底を走る吉野の川底まで見える清らかな激流には、やはり、及ぶものではありません。

帥大伴卿宿次田温泉聞鶴喧作謌一首
標訓 帥大伴卿の次田(すきた)の温泉(ゆ)に宿(やど)りて、鶴(たづ)が喧(ね)を聞きて作れる謌一首
集歌九六一 
原文 湯原尓 鳴蘆多頭者 如吾 妹尓戀哉 時不定鳴
訓読 湯し原に鳴く葦(あし)鶴(たづ)は吾がごとく妹に恋ふれや時わかず鳴く
私訳 次田の温泉の葦の原で鳴く鶴は、私のようにしきりに妻のことを恋しく問うのか、間を置かずに鳴いている。

コメント
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