竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌967から集歌971まで

2020年09月24日 | 新訓 万葉集
大納言大伴卿和謌二首
標訓 大納言大伴卿の和(こた)へたる謌二首
集歌九六七 
原文 日本道乃 吉備乃兒嶋乎 過而行者 筑紫乃子嶋 所念香聞
訓読 大和道(やまとぢ)の吉備(きび)の児島(こじま)を過ぎに行かば筑紫(つくし)の子島(こじま)そ念(も)ゆむかも
私訳 大和への道筋の吉備の児島を通り過ぎるようにして行くと、この筑紫の那の小島の地を思い出すことでしょう。

集歌九六八 
原文 大夫跡 念在吾哉 水莖之 水城之上尓 泣将拭
訓読 大夫(ますらを)と念(おも)へる吾や水茎(みなくき)し水城(みづき)し上(うへ)に涙(なみだ)拭(のこ)はむ
私訳 立派な男の中の男と思っている私ですが、それでも別れに際して大宰府見納めの水茎の水城の上で涙を拭ってしまいます。

三年辛未大納言大伴卿在寧樂家思故郷歌二首
標訓 (天平)三年辛未、大納言大伴卿の奈良の家(いへ)に在(あ)りて故(ふる)き郷(さと)を思(しの)ふる歌二首
集歌九六九 
原文 須臾 去而見鹿 神名火乃 淵者淺而 瀬二香成良武
訓読 須臾(しましく)も去(い)きに見てしか神名火(かむなび)の淵(ふち)は浅(あ)さびて瀬にかなるらむ
私訳 ちょとだけでも行って見てみたいものだ。あの神名火山の辺の淵は、もう、浅瀬のような瀬になっているだろうか。

集歌九七〇 
原文 指進乃 粟栖乃小野之 芽花 将落時尓之 行而手向六
訓読 指進(さしづみ)の栗栖(くるす)の小野(をの)し萩し花落(おつ)らむ時にし行きに手向(たむけ)けむ
私訳 指進の栗栖の小野に萩の花が盛りを過ぎて散る頃に、神名火山の辺の淵を見にいって神名火山に手向けをしよう。

四年壬申、藤原宇合卿遣西海道節度使之時、高橋連蟲麻呂作謌一首并短謌
標訓 (天平)四年壬申、藤原宇合卿の西海道節度使に遣さえし時に、高橋連蟲麻呂の作れる謌一首并せて短謌
集歌九七一 
原文 白雲乃 龍田山乃 露霜尓 色附時丹 打超而 客行君者 五百隔山 伊去割見 賊守 筑紫尓至 山乃曽伎 野之衣寸見世常 伴部乎 班遣之 山彦乃 将應極 谷潜乃 狭渡極 國方乎 見之賜而 冬成 春去行者 飛鳥乃 早御来 龍田道之 岳邊乃路尓 丹管土乃 将薫時能 櫻花 将開時尓 山多頭能 迎参出六 君之来益者
訓読 白雲の 龍田し山の 露霜(つゆしも)に 色づく時に うち越えて 旅行く君は 五百重(いほへ)山 い去(い)きさくみ 敵(あた)守(まも)る 筑紫に至り 山の極(そき) 野し極(そき)見よと 伴の部(へ)を 班(あか)ち遣(つかは)し 山彦(やまびこ)の 答へむ極(きは)み 谷蟇(たにくぐ)の さ渡る極(きは)み 国形(くにかた)を 見し給ひて 冬成りて 春さり行かば 飛ぶ鳥の 早く来まさね 龍田道し 丘辺(をかへ)の道に 丹(に)つつじの 薫(にほは)む時の 桜花 咲きなむ時に 山たづの 迎(むか)へ参(ま)ゐ出(で)む 君し来まさば
私訳 白雲の立つ龍田の山の木々が露霜により黄葉に色づく時に、山路を越えて旅行く貴方は多くの山を踏み越えて敵が守る筑紫に至り、山の極み、野の極みまで敵を見つけて成敗せよと、部下の部民を編成し派遣し、山彦が声を返す極み、ヒキガエルが這い潜り込む地の底の極みまで、その国の様子を掌握されて、冬が峠を越え、春がやって来ると、飛ぶ鳥のように、早く帰ってきてください。龍田道の丘の道に真っ赤なツツジが薫る時の、桜の花が咲く頃に、ニワトコの葉が向かい合うように迎えに参り出向きましょう。貴方が帰って御出でなら。

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