竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌972から集歌976まで

2020年09月25日 | 新訓 万葉集
反謌一首
集歌九七二 
原文 千萬乃 軍奈利友 言擧不為 取而可来 男常曽念
訓読 千万(ちよろづ)の軍(いくさ)なりとも言(こと)し挙(あ)げせず取りに来(く)ぬべき男(をのこ)とぞ念(おも)ふ
私訳 千万の敵軍であるとして、改めて神に誓約するような儀式をしなくとも敵を平定してくるはずの男子であると、貴方のことを思います。
左注 右、檢補任文、八月十七日任東山々陰西海節度使。
注訓 右は、補任の文を檢(かむが)ふるに、八月十七日に東山・山陰・西海の節度使を任す。

天皇賜酒節度使卿等御謌一首并短謌
標訓 天皇(すめらみこと)の酒(みき)を節度使の卿等(まへつきみたち)に賜へる御謌(おほみうた)一首并せて短謌
集歌九七三 
原文 食國 遠乃御朝庭尓 汝等之 如是退去者 平久 吾者将遊 手抱而 我者将御在 天皇朕 宇頭乃御手以 掻撫曽 祢宜賜 打撫曽 祢宜賜 将還来日 相飲酒曽 此豊御酒者
訓読 食国(をすくに)し 遠(とほ)の朝廷(みかど)に 汝等(いましら)し かく罷(まか)りなば 平(たひら)けく 吾は遊ばむ 手抱(たむだ)きて 吾は在(いま)さむ 天皇(すめ)と朕(われ) うづの御手(みて)もち かき撫でぞ 労(ね)ぎ賜ふ うち撫でぞ 労(ね)ぎ賜ふ 還(かへ)り来(こ)む日 相飲まむ酒(き)ぞ この豊御酒(とよみき)は
私訳 天皇が治める国の遠くの朝廷たる各地の府に、お前たちが節度使として赴いたら、平安に私は身を任そう、自ら手を下すことなく私は居よう。天皇と私は。高貴な御手をもって、卿達の髪を撫で労をねぎらおう、頭を撫でて苦をねぎらおう。そなたたちが帰って来た日に、酌み交わす酒であるぞ、この神からの大切な酒は。
注意 標準解釈では標題の「天皇賜酒節度使卿等御謌一首」を尊重して解釈を行います。一方、ここでの私訳は左注の「太上天皇御製」から解釈を行っているため、解釈内容が相違することになります。

反謌一首
集歌九七四 
原文 大夫之 去跡云道曽 凡可尓 念而行勿 大夫之伴
訓読 大夫(ますらを)し去(い)くといふ道ぞ凡(おほ)ろかに念(おも)ひに行くな大夫(ますらを)し伴
私訳 立派な男子が旅立っていくと云う道です。普通の人々が、ただ、旅立つと思ったままで旅立つな。立派な男子たる男達よ。
左注 右御謌者、或云、太上天皇御製也。
注訓 右の御謌(おほみうた)は、或は云はく「太上天皇の御製なり」といへる。

中納言安倍廣庭卿謌一首
標訓 中納言安倍廣庭卿の謌一首
集歌九七五 
原文 如是為管 在久乎好叙 霊剋 短命乎 長欲為流
訓読 如(かく)しつつ在(あ)らくを好(よ)みぞ霊(たま)きはる短き命を長く欲(ほ)りする
私訳 このようにこの世に生きていることを良いこととして、体に宿る霊にも限りもあり、そのような短い人の命が長くあって欲しいと願います。

五年癸酉、超草香山時、神社忌寸老麿作哥二首
標訓 (天平)五年癸酉、草香山を超(こ)へし時に、神社忌寸(かむこそのいみき)老麻呂(をゆまろ)の作れる謌二首
集歌九七六 
原文 難波方 潮干乃奈凝 委曲見 在家妹之 待将問多米
訓読 難波(なには)潟(かた)潮干(しほひ)の余波(なごり)よく見む家なる妹し待ち問はむため
私訳 難波の潟の潮干のなごりの姿を良く見ていこう。家に居る妻が私の帰りを待って旅の様子を聞くだろう、そのために。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする