歌番号 723
詞書 女の許にまかりそめて
詠人 大江為基
原文 比乃宇知尓 毛乃遠布多々比 於毛飛可奈 止久安遣奴留止 於曽久々留々止
和歌 ひのうちに ものをふたたひ おもふかな とくあけぬると おそくくるると
読下 日のうちに物をふたたひ思ふかなとくあけぬるとおそくくるると
解釈 一日の内に貴女とのことを再び思い浮かべます、今朝、早く夜が明けてしまった口惜しさと、今宵のなかなか時が経たずに遅く暮れていくことを。
歌番号 724 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 つらゆき
原文 毛々者加幾 者祢可久之幾毛 和可己止久 安之多和比之幾 加春八万左良之
和歌 ももはかき はねかくしきも わかことく あしたわひしき かすはまさらし
読下 ももはかきはねかくしきもわかことく朝わひしきかすはまさらし
解釈 百も羽を羽ばたく鴫も、私のような早朝の辛さの数では、その数で勝ることは無いでしょうね。
歌番号 725 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 宇徒々尓毛 由女尓毛比止尓 与留之安部者 久礼由久者可利 宇礼之幾者奈之
和歌 うつつにも ゆめにもひとに よるしあへは くれゆくはかり うれしきはなし
読下 うつつにも夢にも人によるしあへはくれゆくはかりうれしきはなし
解釈 現実でも夢でもあの人に寄り、夜に逢えるのならば、日が暮れ行くほど、これほどうれしいものはありません。
歌番号 726
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 安可川幾乃 和可礼乃美知遠 於毛者寸者 久礼由幾曽良波 宇礼之可良末之
和歌 あかつきの わかれのみちを おもはすは くれゆくそらは うれしからまし
読下 暁の別の道をおもはすはくれ行くそらはうれしからまし
解釈 翌朝の暁の貴方との別れの道のことを思わなければ、日が暮れ行く空は、これほどうれしいものはありません。
歌番号 727 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 幾美己不留 奈美堂乃己保留 布由乃世者 己々呂止計多留 以也者祢良累々
和歌 きみこふる なみたのこほる ふゆのよは こころとけたる いやはねらるる
読下 君こふる涙のこほる冬の夜は心とけたるいやはねらるる
解釈 貴方に恋焦がれて流す涙が凍る冬の夜は、貴方を思う心が急いて、居寝ることが出来るでしょうか、いや、出来ません。
注意 四句目、五句目が難解です。