読書日記

いろいろな本のレビュー

サイコパス 中野信子 文春新書

2017-01-16 10:25:56 | Weblog
サイコパスとは「精神病質、あるいは反社会性人格障害などと呼ばれる極めて特殊な人格を持つ人々の事を指す言葉。良心や善意を持っていない」と辞典に書いてある。だとすれば社会生活できずに犯罪などを犯して刑務所や施設で生活しているのかと思うとさにあらず。著者によれば100人に一人はサイコパスであるそうで、経営者、弁護士、外科医など社会的地位が高い人に多いという。だからサイコパスは犯罪者ではないのだ。彼らの特徴は、相手の目から感情を読み取るのは得意で、他人を意のままに操ることができたり、ハイリスク・ハイリターンを好み、自分の損得と関係のないことには無関心なことだと書いてある。
 本書はサイコパスを最新の脳科学で分析したものである。著者曰く、「サイコパスは脳の扁桃体と前頭前皮質の結びつきが弱く、その結果熱い共感を持たず、恐怖や罰から社会的な文脈を学習して痛みや罪、恥の意識を覚えることができない。社会的地位を獲得した勝ち組サイコパスは前頭前皮質の灰白質の体積が多い等々」と。そして革命家・独裁者にもサイコパスと思われる人物が散見されると言って、織田信長、毛沢東、ピョートル大帝、またジョン・F・ケネディやビル・クリントンをはじめ、何人もの歴代アメリカ大統領も顕著なサイコパスの特性を示しているという。また意外なところでは、20世紀に活躍した聖女マザー・テレサもそうだったとアメリカの臨床心理学者の指摘を引用している。それによれば、彼女は、援助した子どもや彼女の側近たちには冷淡だったという。著者は、博愛主義者とは、特定少数の人間に対して深い愛着を築けないサイコパスなのかもしれませんと援護射撃をしている。因みに日本の政治家にもこのような気質を持った人物が多く見られる。特に弁護士あがりの某氏などはピッタリという気がする。無慈悲な「改革」を断行するにあたって、自分から「独裁」は大事だというくらいなのだから。
 独裁者と呼ばれる人間は、平気で人を殺し、それを罪に思わないという面からすればこの器質を持っている可能性がある。凡人からすればどうしてそんな残酷なことができるのか(例えば信長)という疑問を解消する説明ではある。「独特の人格」という言葉では説明できないものがあると前から思っていたが、だとするとヒトラーやスターリンはどうだったのか。研究してほしいものだ。
 狂気の独裁者はどのようにして生まれるのか。最近、美しき美少年が狂気のモンスター=独裁者へと変貌するという映画、「シークレットオブモンスター」を見たが、個人の資質と家庭環境・時代状況が独裁者を生み出すという内容だった。これもサイコパスだったいうのでは映画にならないから、難しいテーマだったと思う。

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