読書日記

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民主主義が一度もなかった国・日本 宮台真司 福山哲郎 幻冬社新書

2010-01-29 21:48:31 | Weblog
 民主党参議院代議士の福山と首都大学東京教授の宮台真司の対談。民主党政権獲得のご祝儀出版という感じ。宮台が民主党のブレーンだとは知らなかった。でも相当頭が切れる。福山は民主党のマニフエスト起草にかかわった人物で、政権獲得後のマニフエスト実現と現実の問題の諸相を語り合う。まあ自民党があまりにも情けない状況だったために地すべり的に民主党の勝利となったわけだが、今最大の懸案は普天間基地移転問題だ。
 自民党政権とアメリカとの間で交わされた辺野古への移転を民主党政権が反古に出来るかという問題である。「事情変更の原則」というのがあり、契約がなされても、契約を支える社会的文脈が変われば、失効することがある、ないし契約条件の一部が無効になることがあるということである。狭義には民法の法理だが、広く捉えれば、社会的文脈が変われば法律の適用条件や解釈が変わるという意味で、国内法全般に成立する。ただし、広義の「事情変更の原則」が効かない領域が二つだけある。憲法と条約ないし外交的約束だ。基地移転問題で、日本が、「国内事情が変わりましたから約束はなかったことにします」はありえない。アメリカからすれば、「日本の国内事情など知ったことではない」のだ。宮台曰く、マニフエストに書いてあるので、普天間基地移設の約束はやめて、県外移設にしていただきますなんていう外交あるわけないでしょうと。
 社民党、国民新党と連立を組んでいる手前、また名護市長選挙で辺野古移転反対派の市長が当選したことで、辺野古移転はないだろうというメディアのバリアーで本質が見えづらくなっているが、辺野古以外はないだろうと思われる。基地反対派の市長が当選したと言うのは国内問題で、外交はそれに引きずられることはないのが原則。平野官房長官の選挙結果を斟酌する必要はないという発言はその意味で正鵠を得ているのに、メディアは官房長官迷走、混迷に拍車、沖縄県人の民意をないがしろにしてどうするなどと言っている。この前までは早くアメリカとの話し合いに決着をつけるべし、日米関係はどうなると鳩山内閣に決断を迫っていたのに、今は民意だ民意だとかまびすしい。外交問題に詳しい前原国交通大臣も、外交と国内問題は別とコメントしているのに大きく取り上げられることはない。五月までに結論と言うが、ここ以外にはないのだ。こうした状況について宮台はマスコミの記者は本当にレベルが低いと嘆いている。総じて日本のマスコミをバカと断定する宮台に私は同感だ。

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