著者は1966年から文化人類学のフイールドワークの一環としてアフリカに渡り、原住民のブッシュマンの調査に携わってきた。以来半世紀を経てその足跡をまとめたのが本書である。さまざまな困難と戦いながら文化人類学の発展に貢献したそのエネルギーにまずは感嘆せずにはいられない。掲載されている写真も豊富でアフリカを身近に感じることができる。
ブッシュマンは「狩猟採集民」と言われているが、生計の基礎を植物採集においているので、「採集狩猟民」と呼ぶのが妥当かもしれないとの指摘がある。彼らは一方で野生動物の狩猟も行なうが、そういつもいつも成功するわけではなく(これはライオンの狩りと一緒)、特に大型のものはめったに獲れない。大型動物の場合、彼らは毒矢を射て弱らせてからとどめを刺すが、なかなか時間がかかる。大型のエランド(鹿の一種)は脂肪が多く彼らの好物で、エランドの踊りもあるくらいで縁が深い。肉は平等に分配される。この平等主義はあらゆるところで徹底されている。従ってグループを統率するリーダーの存在もない。基本的に彼らの集団は家族を中心にしたもので、50人前後の社会が普通。これが獲物の量等で増えたり減ったりするようだ。最低一家族で行動する場合もあるが、餌が取れなくて飢え死にする危険もあるという。彼らの平均寿命は35歳ぐらいという。過酷な環境ではそれくらいになるのかなあと今の自分の年齢を思い、ある種の感慨を覚える。彼らは移動する集団なので、必然的に持ち物は少なくなる。物を所有して貯めるという発想はないようだ。ところが近年狩りをする場合、馬に乗って長距離を駆け巡るやり方が出現すると、獲物は馬の持ち主が多く取るという風に変わってきたという。資本主義的発想が生まれてきたわけである。また最近の開発発展の余波であろうが、ブッシュマンが酒を飲むことを覚え、これが問題を起こしているらしい。元々彼らは物を貯めない流儀だったが、労働で得た金を全部酒につぎ込み、酒びたりの生活になってしまうという。江戸っ子風の宵越しの金は持たないということである。近代化はこのように原住民の固有の文化を毀していく。自給自足の生活に貨幣が入り込むと近代化は急速に進み、取り残される人間が多く発生するという負のスパイラルである。
一方で、著者はケニア北部の砂漠地帯に住む遊牧民レンディーレについても調査している。彼らはラクダの遊牧民だが自然環境の厳しさから生き残るために人間の数を増やさないための工夫として、晩婚の風習があるという。これも自然と人間の力関係から生まれた究極の発想と思うが、逆にそこまでしなければ生き抜けない環境なのだ。改めて人間の生き抜く力に感銘を受けた。
本書によって原初の人類の姿を垣間見ることができた。彼らの営みに比べて昨今の人間はどうなのか。いろいろ考えさせられた。
ブッシュマンは「狩猟採集民」と言われているが、生計の基礎を植物採集においているので、「採集狩猟民」と呼ぶのが妥当かもしれないとの指摘がある。彼らは一方で野生動物の狩猟も行なうが、そういつもいつも成功するわけではなく(これはライオンの狩りと一緒)、特に大型のものはめったに獲れない。大型動物の場合、彼らは毒矢を射て弱らせてからとどめを刺すが、なかなか時間がかかる。大型のエランド(鹿の一種)は脂肪が多く彼らの好物で、エランドの踊りもあるくらいで縁が深い。肉は平等に分配される。この平等主義はあらゆるところで徹底されている。従ってグループを統率するリーダーの存在もない。基本的に彼らの集団は家族を中心にしたもので、50人前後の社会が普通。これが獲物の量等で増えたり減ったりするようだ。最低一家族で行動する場合もあるが、餌が取れなくて飢え死にする危険もあるという。彼らの平均寿命は35歳ぐらいという。過酷な環境ではそれくらいになるのかなあと今の自分の年齢を思い、ある種の感慨を覚える。彼らは移動する集団なので、必然的に持ち物は少なくなる。物を所有して貯めるという発想はないようだ。ところが近年狩りをする場合、馬に乗って長距離を駆け巡るやり方が出現すると、獲物は馬の持ち主が多く取るという風に変わってきたという。資本主義的発想が生まれてきたわけである。また最近の開発発展の余波であろうが、ブッシュマンが酒を飲むことを覚え、これが問題を起こしているらしい。元々彼らは物を貯めない流儀だったが、労働で得た金を全部酒につぎ込み、酒びたりの生活になってしまうという。江戸っ子風の宵越しの金は持たないということである。近代化はこのように原住民の固有の文化を毀していく。自給自足の生活に貨幣が入り込むと近代化は急速に進み、取り残される人間が多く発生するという負のスパイラルである。
一方で、著者はケニア北部の砂漠地帯に住む遊牧民レンディーレについても調査している。彼らはラクダの遊牧民だが自然環境の厳しさから生き残るために人間の数を増やさないための工夫として、晩婚の風習があるという。これも自然と人間の力関係から生まれた究極の発想と思うが、逆にそこまでしなければ生き抜けない環境なのだ。改めて人間の生き抜く力に感銘を受けた。
本書によって原初の人類の姿を垣間見ることができた。彼らの営みに比べて昨今の人間はどうなのか。いろいろ考えさせられた。