読書日記

いろいろな本のレビュー

思い出のアメリカテレビ映画 瀬戸川宗太 平凡社新書

2014-06-15 17:13:33 | Weblog
 1950年後半から1960年代は日本の復興期でそのころ少年時代を過ごした者にとってテレビは貴重品で、最初は各家にはなく、近所の金持ちの家に見せてもらいに言ったものだ。その頃は日本もまだまだ貧しく、発展途上国丸出しの状態だった。本書はその頃のアメリカ発のテレビ映画の解説で、著者自身(私とほぼ同年)がテレビ少年であったため、解説は微に入り細に渡るすぐれものだ。1956~1958年では、「ハイウエイ・パトロール」「スーパーマン」「名犬ラッシー」「名犬リンチンチン」「ヘッケルとジャッケル」「パパは何でも知っている」「ディズニーランド」などが挙げられているが、中でも「パパは何でも知っている」はアメリカの家庭劇だが、大きな家に車、冷蔵庫と日本ではありえない生活の豊かさが描かれ、これでは戦争に勝てるわけがないと子ども心に思ったものだ。そのパパは分別があり、良き家庭人として描かれ、アメリカって本当にすごいと感じた。「ディズニーランド」も子どもには楽しみだった。「未来の国」「おとぎの国」「冒険の国」「開拓の国」という四つの国に別れ、そのどれかの国と関係のあるアニメ、ドラマ、記録フイルムなどを1時間の枠内で放映した。中でも私のお気に入りは野生動物が主人公のもので、どうして感動的なストーリーが作れるのか不思議でならなかった。至福の時だった。
 1958年~1961年は「うちのママは世界一」「ローハイド」「拳銃無宿」「世にも不思議な物語」「ミステリーゾーン」「ララミー牧場」「ブロンコ」「ライフルマン」「モーガン警部」「サンセット77」が挙げられている。ここでは「ミステリーゾーン」がお気に入りで、夢中で見た。今覚えているのは「奇跡の砂」という話で、絞首刑寸前の男が刑の執行前に砂をまいて、奇跡が起こる、奇跡が起こると言いまわる。その後、絞首刑に処せられたが、何とロープが切れて男は助かるという話。どういうわけかこの話の映像が今でも脳裏から離れない。どういうわけだろう。
 その他「テレビ名画座」も紹介されている。この番組は午後3~4時ごろ放映されていたように思うが、小学校から帰っておやつを食べながら見た記憶がある。翌日学校で友達と感想を述べ合うのが楽しみだった。その中で一番話題になったのが「眼には眼を」という映画で、ラストシーンがすごかった。著者も次のように誉めておられる、「とりわけ『眼には眼を』の凄まじいまでの復讐劇には不思議な感銘を受けた。アラブ人役のフオルコ・ルリに騙されるフランス人の医者役クルト・ユルゲンスが、果てしない裁くを歩いて行くラストは、その後のユルゲンスの死を確実に予測させ、救いのない結末に圧倒された感覚を今でもはっきり思い出すことができる」と。私と同じ番組を見て感動した人間がいて、このように本にして俳優・監督名の詳細を教えてくれるとは、実に感動的である。
 1962年以降もまだまだ続くが、後は見てのお楽しみということで。なお、同じ瀬戸川氏の『懐かしのテレビ黄金時代』(平凡社新書)も日本のテレビ番組の変遷を豊富な知識で楽しく解説してくれている。