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戦争報道メディアの大罪 ピーター・ブロック ダイヤモンド社

2010-04-11 14:36:10 | Weblog

戦争報道メディアの大罪 ピーター・ブロック ダイヤモンド社



 副題は「ユーゴ内戦でジャーナリストは何をしなかったのか」で、偏向報道の罪を改めて問い直すというものである。ユーゴはチトー大統領没後、ボスニアが92年に独立を宣言、独立賛成のムスリム人とクロアチア人、反対のセルビア人の3民族の衝突から旧ユーゴ連邦軍の介入に発展し、紛争は95年まで続いた。この間、いずれの勢力も同様の残虐行為を行っていながら、戦争犯罪人として告訴されるのは一勢力だけだ。具体的にはセルビア人勢力が戦争犯罪人の汚名を着せられ、最高指導者のラドバン・カラジッチは国連旧ユーゴスラビア国際法廷(オランダ・ハーグ)から集団殺戮などの罪で起訴され、昨年拘束された。「スレブレニツアの虐殺」だけで7千人以上の死者が出たとされる。ところが本書によると、実際に出た死体はごく少数でジェノサイドといえるものではないと言うことなのだ。それではなぜこのような報道がなされたのかというと、アメリカを中心とした西側の戦略で、非常に政治的な偏向報道がなされた結果だと著者は言う。ありもしない虐殺・レイプ事件をでっち上げるのは西側の記者で、彼らはセルビア人に不利な報道を継続した。その記者達にピューリッア賞がご褒美として与えられるという仕組みらしい。そうすると国際法廷も公正な裁判を実行できるのかという疑問が出てくる。なんか東京裁判の様相を呈して来たではないか。カラジッチはアイヒマンのようになるのではないかという一抹の危惧がふと沸き起こった。
 アメリカやイギリスやフランスの旧連合国はヒトラーに対する「正義の戦争」を戦ったという自負があり、これがその後の60年間の戦争を正当化している。イギリスに対しても大国アメリカに対しても、道義の白紙委任がなされているというケンブリッジ大学のリチャード・ドレイトンの言を引いて「民主主義の戦争」の実態を暴いている。イラク戦争はまさにその典型と言える。
 蓋しアメリカをはじめとする西側諸国の「正義の戦争」の変形が捕鯨反対運動である。クジラ・イルカは可愛い動物でこれを食す野蛮人は許せないという正義の論理を振りかざし、シー・シェパードという狂信的な半捕鯨運動に手を貸して日本をいじめている。太地のイルカ漁を盗み撮りした映画がアカデミー賞を受賞したなんて全くどうかしてる。またその映画を日本の興行会社が日本で上映したいと言っているのを聞いて、あいた口がふさがらない。どこまで馬鹿なんだ。
 キリスト教文明に対抗しているのはイスラム教だが、仏教国日本も何とか一矢報いることを考えるべきだ。民主党の小沢幹事長がキリスト教は云々と批判していたが、その程度ではダメだ。

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