読書日記

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女性専用車両の社会学 堀井光俊 秀明出版会

2009-12-17 21:36:59 | Weblog

女性専用車両の社会学 堀井光俊 秀明出版会



 女性専用車両なるものがある。間違って乗り込んで、女性から軽蔑の視線を感じた男性も多いであろう。最近とみに増えている。理由は痴漢から身を守るためというのだが、実際見てみると老若混在状況で、若い女性ばかりではない。電車内で「痴漢は犯罪です」という広告をよく見るが、最近の冤罪事件をみるにつけ、中高年男性の私としてはそういう騒動には巻き込まれないように比較的空いた時間帯に読書をしながら乗ることをこころがけている。
 それにしても今頃の電車内の若い女性のなかには「これってどうよ」と首をかしげるような手合いが多い。会社員らしいが、傍若無人に醜い顔をせっせと改修工事に余念のないもの、車内で物を食うもの(ポテトチップスは止めて欲しい)、純粋に個人的な話題を大声でしゃべるもの(恥ずかしくないのかしら)、いろいろだが、その手の女性に敵視されるのが、オヤジだ。オヤジの年齢は30~40歳代が普通らしいが、もちろん50代も含まれる。曰く、臭い。不潔等々。でも会社じゃそのオジサンの上役に使われているのじゃないのかい。前々からオヤジ敵視の裏には明らかに職場での対男性のストレスがあると思っていたが、本書を読んで一層その感を強くした。
 著者によれば、電車内の空間は公共空間で、乗客は社会的に定義された役割を抜け出でて「個人化」する。「個人化」した電車内の空間では、新たな不安が作られる。誰でも自由に進入できるということは、自由を侵害する人間も利用できる。痴漢やスリはその代表例である。公共空間の匿名性と密集性を搾取したものが痴漢行為であると。なるほど、よくわかる。
 この危険を予め回避したのが女性専用車両である。しかし、アンケートによると別にこれに乗りたいという女性の割り合いはそれほど高くないのも事実。そんなオヤジを怖がっていてどうするのと考えている女性も多いのだ。したがってオヤジ拒否の裏には若い女性の労働におけるジレンマがある。男女機会均等法で女性の社会進出は劇的に広がったが、一方で男性中心の家父長制的な雰囲気が残っているのも確かだ。彼女たちはその中で女性であることを否応なしに意識させられる。男性と伍しての会社勤めは厳しいことも多い。その状況下で女性専用車は旧来の良妻賢母、専業主婦型の「女性的なもの」への回帰として意識される。以上が著者の社会学的分析で、なかなか面白い。もしも、男性専用車両を作ったら、その趣味がある男ばかりが集まって風紀が乱れることになりかねないだろう。女性専用車両とは全く意味が違ってくる。しかし実際乗ってる女性は外から観察しただけだが、男性社会からの逃避と意識しているかどうかはいささか疑問だ。私の目にはアマゾネスの女性兵士軍団がくだを巻いているように見えるのだが、オヤジのひがみだろうか。
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