路地とは被差別のこと。作家・中上健次がそう呼んだ。彼は新宮の被差別の出身で、デビュー作『岬』をはじめ「路地」を題材にしたものが多かった。中上が自分の出自を語ったのは三十数年前の「朝日ジャーナル」での安岡章太郎との対談の時だったと記憶する。「路地」の人間模様が土着の言葉で語られるときそれは大きなインパクトとなって、小説の力になった。早死にしたのが誠に残念である。
本書は「路地」出身の作者が全国の「路地」を訪ね歩く紀行文である。中身は非常にシリアスで、解説の西村賢太が言うように、気楽なお散歩風エッセイではない。「路地」を訪ねてインタビューするということは、同和教育等が積み重ねられて来た地域であれば、抵抗は少ないが、そう言う運動の歴史がない地域では相当の困難が伴う。その困難な敢えて挑戦しているところが素晴らしい。これによって、全国の解放運動の温度差がはっきりわかる。
旅の最後に、少女に対して恥ずべき犯罪を犯して沖縄に流れて行った実兄と会い、幼い日の切ない思い出を確認する場面がある。そこで被差別者として生きてきた悲しみや憤りが改めて確認される。最後に魯迅の『故郷』の例の一節が引用される。「希望と言うのはもともとあるとも言えないし、無いともいえない。それはちょうど地上にある路のようなもので、その実、地上にはもともと道など無かったというのに、歩く人が多くなり、そこが道になったのだ」で、これを路地の成立と重ね合わせて感慨を述べる。なかなかうまい終わり方である。書棚から古ぼけた小さな『魯迅全集』を取り出して確認したとある。小さな『魯迅全集』は筑摩学芸文庫版だろうか。そこに興味が湧いた。
本書は「路地」出身の作者が全国の「路地」を訪ね歩く紀行文である。中身は非常にシリアスで、解説の西村賢太が言うように、気楽なお散歩風エッセイではない。「路地」を訪ねてインタビューするということは、同和教育等が積み重ねられて来た地域であれば、抵抗は少ないが、そう言う運動の歴史がない地域では相当の困難が伴う。その困難な敢えて挑戦しているところが素晴らしい。これによって、全国の解放運動の温度差がはっきりわかる。
旅の最後に、少女に対して恥ずべき犯罪を犯して沖縄に流れて行った実兄と会い、幼い日の切ない思い出を確認する場面がある。そこで被差別者として生きてきた悲しみや憤りが改めて確認される。最後に魯迅の『故郷』の例の一節が引用される。「希望と言うのはもともとあるとも言えないし、無いともいえない。それはちょうど地上にある路のようなもので、その実、地上にはもともと道など無かったというのに、歩く人が多くなり、そこが道になったのだ」で、これを路地の成立と重ね合わせて感慨を述べる。なかなかうまい終わり方である。書棚から古ぼけた小さな『魯迅全集』を取り出して確認したとある。小さな『魯迅全集』は筑摩学芸文庫版だろうか。そこに興味が湧いた。