読書日記

いろいろな本のレビュー

公明党の深層 大下英治 イースト新書

2014-08-12 08:49:49 | Weblog
 本書は公明党結党50年を記念して、その政治と宗教の本質を描いたものという謳い文句であるが、結局著者から「公明党さんへ」という花輪を贈った内容で、よいしょよいしょの連続には辟易した。
 第一章では戦後の公明党を担ってきた政治家のプロフイールが紹介されている。黒柳明、大久保直彦、市川雄一、坂口力、山口那津男(現代表)、太田昭宏(現国土交通大臣)、白浜一良、井上義久(現幹事長)、東順治である。それぞれ簡潔にまとめられてその人となりの善良さと、刻苦勉励して頑張っている中で創価学会に入信したいきさつが語られる。その中で池田大作の偉大さが強調され、創価学会・公明党の正統性が間接的に浮かび上がる仕組みになっている。
 かつて政教分離問題で創価学会・公明党を批判した公明党元委員長の矢野絢也については、単なる言いがかり程度の扱いに終始している。本書の出版直後に、公明党は安部内閣の集団的自衛権の行使容認に賛成したわけだが、反対を言い続けてきたのに政権離脱にメリットがないと考えて賛成に回ったやり方は、今後党の運営に困難をきたす可能性がある。安部政権に踏み絵を踏まされて踏んでしまったのだから、「平和の党」の看板が泣くだろう。
 著者にも「十五年強におよぶ自公の連立の歴史と信頼関係があることからすれば、この問題で公明党が政権離脱するようなことは起こり得ないであろう」と足元を見透かされている。公明党と自民党に共通点があるとすれば、それは官僚主義的組織に拠っていることだと思われるが、公明党が現有勢力で権力側に就き続けるには苦労が多いであろう。共産党のように野党に徹する選択肢も考えた方が、長い目で見て有利なのではないか。「虎の威を狩る狐」にならないことを願う。
 著者には『日本共産党の深層』(イースト新書)というのもある。これも共産党翼賛の内容なのだろうか。また読んでみよう。