旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」について

2015-02-11 18:04:33 | 文化(音楽、絵画、映画)

 

 ビデオであるが「カヴァレリア・ルスティカーナ」を観た。何故かと言えば、娘のオペラ創作集団「ミャゴラトーリ」が、これを公演することになったからだ。
 娘たちは昨年、小劇場演劇的オペラとして「ラ・ボエーム」を公演し、クラシック専門誌『MOSTLY・CLASSIC』の「副編集長の選ぶ今年の催しベスト5」の2位に選ばれるなど好評を得た。それは、オペラ界の鬼才と呼ばれる岩田達宗氏の演出を頂いたことによるが、その岩田氏から「今年も何かやろう」と言うお声がかりを頂いて、急遽とり組むことになったのだ。5月30日(土)、牛込箪笥ホールで上演する。

 1時間もののこの物語は、そこらあたりにたくさんある三角関係の色恋沙汰に見える。舞台となるシチリアなどでは日常的にありそうな物語だ。
 美しい女ローラはトゥリッドゥの恋人であったが、ローラは彼の兵役中に馬車屋のアルフィオと結婚してしまった。除隊後帰郷したトゥリッドゥは、ローラを忘れるべく村娘のサントゥッツァ(サンタ)と婚約したが、留守がちなアルフィオの目を盗んでローラと逢引を重ねる仲に戻る。それを知ったサンタは怒りのあまりそのことをアルフィオに告げる。アルフィオは復讐を誓い、観念したトゥリッドゥは決闘を申し込んでアルフィオに殺される。これだけ聞けば普通の物語だ。
 しかし、シーリアスな場面がいくつかある。サンタは既にトゥリッドゥの子を宿していた。結婚前、つまり神の許しを得てない妊婦は神の館、つまり教会にも入れない。教会の入り口の手すりに触れながら悩み苦しむ中を、トゥリッドゥとローらは教会に入っていく。サンタのアルフィオに対する“激情のつげ口”を招く場面だ。
 彼女はこのつげ口を後悔して苦しむ。そしてそれは神の怒りに触れたのか、愛するトゥリッドゥを死に導く。しかし、キリスト教の社会にあって教会に行けないということはその村には住めないということではないか? その苦しみはいかばかりかと思う。
 あの美しい間奏曲の後、死を覚悟したトゥリッドゥは、母ルチアに「私が死んだらサンタを頼む」と歌ってアルフィオとの決闘に赴く。美しいローラに惹かれながらも、最後に思いを賭けたのはサンタであった。そこには、教会へも行けないサンタへの救いが歌われているのだろうか?
 それぞれの登場人物の心のひだを、鬼才岩田達宗氏はどのように表現するのだろうか? 楽しみだ。


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