旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

スーチーさん21年後のノーベル平和賞受賞講演

2012-06-19 12:44:33 | 政治経済

 

 ビルマ(現ミャンマー)の平和活動家アウンサンスーチーさんがノーベル平和賞を受けたのは1991年、21年前のことであった。この間スーチーさんは自宅軟禁を強いられ、この名誉ある賞の受賞講演の機会も与えられなかった。去る16日オスロで行われた記念講演は、世界の人々に感動を与え、21年後という歳月の重みが、この賞の値打ちを一層高めたように思われた。
 スーチーさんはこの間、非暴力に徹しながらも決して節を曲げることなく自由と平和を求めて闘い続けた。仏教徒であるスーチーさんは、この間の苦しみを仏教語の「苦しみ」を表す「ドゥカ」という言葉で語った。「ドゥカ」には苦しみを示す六つの意味があり、それは「生を受けること、年を取ること、病を得ること、死ぬこと、愛する人と別離すること、愛していない者との暮らしを強いられることだ。私は軟禁中、これらを日常的に実感した」(17日付毎日新聞7面「講演要旨」より)と赤裸々に吐露した。そしてその苦悩との戦いを支えてくれた一つがノーベル平和賞であったと次のように語っている。

 「私が平和賞を受賞したのは、抑圧され孤立したビルマもまた世界の一部であり、人類は一つであるとノーベル賞委員会が認めたということだ。受賞をきっかけに、民主主義と人権への私の関心は、国境を越えて広がった。平和賞が私の心の扉を開けてくれたのだ」(同前)

 そして最後に、「我々の究極的な目的」としてその願い続けてきた中身を述べた。

 「我々の究極の目的は、帰るべき家や希望がない人々が存在しない世界、自由で平和に暮らせる真の聖域のある世界を作り上げることだ。安心して眠り、幸せな気持ちで目覚められる世界を作るために手を携えよう」(同前)

 彼女の求め続けたものは、かくも当たり前なことであった。安心して眠り、気持ちよく目覚めることのできる生活…、この平凡ともいえる生活こそ彼女の掲げる「自由と平和」の中身なのだ。「ノーベル委員会やノルウェー国民、全世界の人々の支援は、平和を追求する私の信念をさらに強めてくれた」という感謝の言葉で結ばれた講演会場には、長く鳴り止まぬ拍手が続いたと報じられている。

         
         2012.6.17付毎日新聞一面より


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