旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

北欧の酒「ウオッカ」--その地で飲む美味しさはたまらない!

2007-02-24 15:37:57 | 

 

  五木寛之が、「・・・オペラなどを観てそのまま家に帰るほど淋しいものはない。劇場近くの飲み屋で杯を重ねながら、その興奮を心ゆくまで語り合うことこそ観劇の喜びだ・・・」というようなことを何かに書いていたが、『オテロ』を観てプリバルチスカヤホテルに帰った妻と私は、(マリインスキー劇場のすぐ近くの飲み屋とはいかなかったが)13階のレストランで遅い夕食をとりながら、オペラの興奮をいつまでも語り合った。バリトンかと思われるような力強いテノールのオテロ役のこと、ロシア美人そのままの美しいデズデモーナ役のアリア「柳の歌」のこと、オテロのような内容のオペラはロシアオペラにかぎる!、などなど。
  そのとき飲んだ酒が、(トルスチャクTOLSTIAKというビールも飲んだが)ウオッカ「ストリチナヤSTOLICHINAYA」であった。この酒の、ほどよい甘さを漂わせた透明感は、マリインスキー劇場に響き渡った凛々しい役者たちの声を髣髴とさせ、私にウオッカの素晴らしさを再認識させた。きりっとした味とのど越しが「ロシア風ニシン料理」とぴったり合って、私を心地よい酔いの境地に誘ってくれた。

  この6日間の北欧の旅の間、私は毎日ウオッカを飲んだ。その最大の収穫は、同行の人たちにウオッカの美味しさを理解してもらったことであった。サンクト・ペテルブルグ最初の夜、私が「モスクワスカヤ・クリスタル」を注文して飲んでいると一行は、「首藤のやつ、あんなものばかり飲んで・・・」という蔑みの眼差しをしていた。だいたい戦後悪い酒ばかり飲まされてきた連中は、本物の味を知らず、特に焼酎、泡盛、ウオッカなど強い酒はすべて悪い酒(少なくとも悪酔いする酒)だという観念にとらわれている。
  私はまずK氏に「ロシア料理にはウオッカですよ。騙されたと思って一口飲んでみませんか」と薦めた。「喉や胃にカーッとくるんじゃないの?」などと言いながら一口なめたK氏・・・、「えー? ウオッカってこんなに美味しいの?」と一言。飲み進むうちに私に対する蔑みの眼は尊敬の眼差しに変わるかに見えた。
 K氏はその後、食事のたびにウオッカを注文するようになり、最後には「この旅最大の収穫の一つはウオッカを知ったことだ」と言うにいたり、フィンランド空港ではついに、フィンランドが生んだ著名なウオッカ「フィンランディア」を購入したのである。おみやげではなく自宅で自分が飲むために。
 それにしても最後の夜、ホテルのバーで白夜を眺めながら、ニシンの酢漬けで飲んだ「フィンランディア」は美味しかった。
                           


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