昨日10月8日は、24節気の寒露。あるいは次の10月23日の霜降までを寒露と呼び、秋はいよいよ深まり冷気によって露が凍りそうになる時節とされている。またWikipediaによれば、「雁などの冬鳥が渡ってきて、菊が咲き始め、蟋蟀(こおろぎ)などが鳴き止むころ」となっている。
昨日は大型台風一過ともあって気温は28度に上がり、とても露が凍りそうになるとは思えなかったが、一方で、一日の温度差が一番大きい時期とも言われているので、確かにそのような季節になってきたのであろう。
この時節の酒は何か。寒という字には「怜悧できりっとした」響きがあり、露には「清らかな透明感」がある。いずれも酒にとって重要な要素だ。そしてそのような酒として私はいつも『十四代』を想起する。
十四代は特に奇をてらった酒とは思わない。米の削りが特別だとか、特別の米や酵母を使っているとも思えない(大吟醸の35%はそれなりの精米歩合であるが)。そんなことより、ただひたすら「よいお酒を造ろう」と励んできた結果「こんないい酒が出来ました」と言うような感じだ。先日、高木顕統蔵元と親しく話す機会を得たが、これほどの人気を背負う蔵元にしては肩に力が入っていない。そして「ブランドはお客様がつくるものです」と言い、「自分たちはただお客様に喜んでもらえる酒を造るだけです」というようなことを言っていた。
最近銀行に金を借りて工場を完備したが、売上げ増などを気にする銀行に対して、「売上げは上がりません。しかし、これでお客様には喜んでもらえます」と答えたそうだ。
私は、戦後の日本酒革命の第一段階が「本物の日本酒の存在を示した『越乃寒梅』」で、第二段階が「日本酒の質を格段に引き上げた『十四代』」と位置づけている。もちろん十四代だけでなく多くの蔵が純米酒を中心に日本酒の質的向上を図ってきたのであるが、その高い品質の酒を広く全国に広げたキッカケが十四代にあったと思っている。
サラリーマン時代を経験し、市井における日本酒の問題点を知って上で蔵に帰り17年、一つの到達点を築いてきたが、まだ40歳を過ぎたばかりの高木蔵元には、これからも期待するものが山ほどある。
高木蔵元と
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