ヨーロッパ三国(独、仏、英)の旅で一番身にしみたのは「円の弱さ」であった。どこの国で何を買っても、何を食べても「高い」と思った。失われた10年(15年?)という長い不況の中で、日本の物価は上がらなかった。むしろ下がった。かつて世界一の高物価都市は東京であったが、今はかなり順位を下げている。そのような国から出て行けばどこも物価は高く映る。
しかし最大の原因は「円の弱さ」だ。国際間の物価比較は、通貨の交換比率を通して測られるので、自国通貨の強弱が物の価格を大きく左右する。
20年前最初にアメリカに行った時、今回とは逆に、何を買っても何を食べても「安い」と思った。特に90年代の「1ドル百円以下」の時代は、金を払うとき何か申し訳ないような気がしたものだ。
今回はそれと全く逆転した時代を感じた。
最も円の強いときは「1ドル80円台」であった。今は1ドル115~120円だ。80円が120円になったということは40円アップ、つまり5割アップだ。同じ中味の1万円の物が1万5千円になれば、これはちょっと抵抗を感じる。
ユーロも120円くらいからはじまり今は160~170円だ。40~50円のアップというのは、これまた3~4割の値上がり。ポンドに至っては250円ともっと割高だ。実際にそれだけ物の値打ちが上がっているのなら仕方ないが、物は同じで、相場の所為だけで高くなるのだから堪らない。
その中の旅は本当に辛く、何か惨めな思いさえした。
旅の準備をしている8月の中旬、アメリカのサブプライム問題からドルがかなり下がった。それにつれてユーロも160円台から150円台に下がった。最低は8月17日の152.76円、しめしめと思い少しずつユーロを買い込んだ。サブプライム問題の深刻さから見て140円台もありうると甘く構えていたところ、さにあらず、じりじり持ち直して私がドイツに向けて出発した9月19日には161.88円と160円台に逆戻り、10月に入って164円台を続ける中で、10月5日帰朝した。(使用数字はいずれも、対顧客電信相場の仲値)
相対的とは言え突如到来した円の強さを楽しもうと思ったのだが、なかなかうまくいかないものである。
まあ、久しぶりに為替相場に思いをいたし、一喜一憂しただけでもよしとするか…。
なのかのメールのやりとりをしています。日本で働きアメリカに住んでいる友は円高がいいと言うし、アメリカで働き、日本に住んでいる友人は円安を望むといっています。年金の受取額に影響がでてくるからです。マルクス経済学者は、適正レートは何かについて
購買力平価説をとっている人が多いようです。相対的
購買力平価説では円は150円位という計算もあります。円高によって日本の労働者がリストラにあい苦労
しているのだから、適正レートの実現に努力すべきと
いう見解もあり、なかなか難しい面があるなと思います。利害がからんできますから。