旅先で受ける親切は心にしみるものである。前回書いたU航空とTさんの、サービス精神に充ちたビジネスもうれしかった。そしてアメリカでは、市井の中で日常化している親切な振る舞いにたくさん出会った。
6月12日はプエルトリコの独立記念日で、その移民の多いニューヨーク市五番街はパレードでごった返す。ちょうど居合わせた(1989年6月12日のこと)私と妻は、華やかなパレードを何時間も楽しんだが、それはさておき・・・。
私はどうしてもメトロポリタン美術館に行く用事があったので、その人ごみをかき分けて美術館に向かった。(もちろん、タクシーは混雑を理由に乗せてくれなかった)
途中セントラルパークで「日曜日のアメリカ人の態様」に触れる幸運に恵まれたりしたが、さすがに疲れ果てて、帰りはとにかくタクシーをつかまえ頼み込んだ。ドライバーは「近いから歩け」と言うが、私は「疲れているんだ」と重ねて頼むと、「回り道で時間がかかるが、No problemか」としきりに聞きながらやっと乗せてくれた。
しばらく走って空いた道に出ると、彼は「疲れているのなら、これを飲め」と缶コーラくれた。生暖かいコーラは最高の味とは言えないまでも渇いた喉に快適で、私は金を払いたいと告げた。ところが彼は「金は要らない。俺のもあるんだ」と、もう一本の缶を抜いて、片手で運転しながらグイグイ飲んだ。
このような親切は、ニューヨークでは普通のことなのだろうか? 日本ではこうスムースにはいかない。私は8ドル強の料金に対し10ドル紙幣一枚しか渡さなかったことが、未だ気になっている。
私は糖尿病で低血糖の発生に備え、ブドウ糖の携帯を医者より言われていますが、持っていなかった時は、
コーラを飲むのがいいようだと言われたことがあります。
コーラにそのような効能があると知りませんでした。アメリカ人は「大して美味しくないもの、をいつまでも飲んでるなあ」と思っていたのですが、ちゃんと計算して飲んでいるのですかねえ。
それにしても、あの運転手の親切は、いかなる美味しい飲み物よりも感動的でした。 tabinoplasma