世界陸上マラソンの尾崎選手の銀メダルについて、山下監督との長年にわたる地道な努力で勝ち得たさわやかな勝利と書いた。事前に派手に騒がれることはなかったが、一番地味な選手がスルリとメダルに滑り込んだ感がしたからだ。
尾崎選手自体が、自らを「カメのようにのろい」と自覚しており、何よりも「地味で地道な」山下監督が、それを知り尽くして育て上げたに違いないと思ったのだ。
そんなことを書いていたら(前回ブログ)、世界柔道選手権ロッテルダム大会で、全く似たような選手が今度は金メダルを獲得した。
48キロ級の福見友子選手だ。女子48キロ級といえば谷亮子選手やわらちゃんの指定席だ。その谷がちょうど二度目の妊娠で出場しない間に、あっさりとその穴を埋めたのである。
ところがこの福見という選手は、「谷の穴埋め」というようなやわな選手ではなさそうだ。これまでの実績を見ても、7年前の高校2年生のときに当時65連勝中であった谷に勝って、その連勝記録にストップをかけている。また、2年前の世界選手権国内予選では決勝で谷を破り優勝している。
しかし選考委員会は、優勝した福見を代表に選ばず「実績があるから」と谷を選んだ。谷は見事その大会でも優勝しているので、選んだ方が間違っているとは言わないが、福見としては屈辱に耐え得ないものがあったであろう。そのとき彼女は「谷さんに勝って満足感があった。甘かった。」と言ったという(8月27日付日経新聞41面)。そして「実績をつけるため」に全ての力を今回の金メダルに向けてきたのだ。
メダルを手にした彼女は「谷さんと違う経験をしてきた。それが現れると思う」と語っている。それを報じた前掲日経新聞は、「世代交代へ、もの静かな柔道家が大きな一歩を記した」と報じている。
ここ数年間、まったく谷の日陰を歩いてきた福見は、初めての世界選手権で金メダルを取った。しかし、若し一国2代表が可能で、これまでもオリンピックや世界選手権に谷と共に出場していたならば、常に決勝を谷と争い、一つや二つの金メダルを取っていたかもしれない。
24歳の彼女は、今後こそ日のあたる世界の大道を歩きつづけて欲しいものだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます