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旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

大統領選に見るアメリカ人の知恵 … 得票数ではクリントンを勝たせ、現実政治はトランプに委ねた

2016-11-10 15:55:19 | 政治経済

 

 大方の予想を裏切ってトランプが勝利し、世界中が大騒ぎをしている。マスコミを中心に世論を読み切れなかったようで、もっと言えば、アメリカ国民は正直な心情を世論調査に反映していなかったようだ。もっと言えば、今のアメリカの現状を解決するにふさわしい人物が、候補者にいなかったということだろう。
 1%の富裕層への富の集中、中間層の崩壊、一方への貧困の蓄積…、という資本主義の行きづまりの中で、さすがの大国も喘いでいる。民主党の予備選の中で、わずかにサンダース候補が、その解決の方向を示そうとし、若者たちが熱烈に支持したが勝利には至らなかった。残された既存政治家クリントンと、新鮮ではあるが下品な金持ちトランプの、いずれかを選ばされたアメリカ国民の当惑が目に見える。
 トランプが勝利したが、彼は、法人税減税、移民の排斥などとともに、強いアメリカの復活を呼び掛けたが、前述の諸問題を解決する策を示したわけではない。彼の経歴、バックである保守党の政策からすれば、格差と貧困はむしろ拡大されていくだろう。ただ、彼には何かが変わるかもしれないというエネルギーが感じられた。「何でもいいから変えてくれ」という思いが、彼に勝利をもたらしたのだろう。
 それにしても、トランプを選ぶには勇気がいったであろう。いくつかの暴言はまだしも、この好色な金持ちへの支持を公然と表明するのは、世界をリードする大国アメリカ国民として躊躇せざるを得ない。しかし、隠れ支持者になってでも、何らかの「変化」を求めたのだ。上品なマスコミには、それは読めなかった。
 上品と言えばクリントンだが、こちらは上品すぎて、およそ一般国民とは相通じない。富裕層の代表、ワシントン――ホワイトハウスを代表するこの「既存政治家」に、国民は心から期待するものを持たない。女性を覆う厚いガラスにようやくひびを入れ、それを打ち破る寸前まで来たクリントンの敗北を不憫に思うが、彼女は、ホワイトハウス政治の「最良の候補者」であったかもしれないが、今のアメリカ国民が選ぶ「最善の玉」ではなかった。
 そこでアメリカ人は、粋な選択をした。得票数ではクリントンが上回ったということは、通常の直接選挙ならクリントンの勝利だ。国民は、下品なトランプは選ばないというプライドを示した。しかしそんなプライドは何の役にも立たないので、選挙制度のあやを使って、現実政治はトランプに委ねた。とてもクリントンに委ねる気にはなれなかったのである。
 それほど、アメリカの、いや世界の直面する病巣は深いのかもしれない。しかも、大騒ぎした選挙結果からは、その病を退治する策は何も出てこなかったようである。
 


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