旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

悲しき日本酒

2009-01-28 15:05:29 | 

  ある結婚式に出席した感想を一つ。
 
その結婚式場は、その地にあってはトップクラスで、建物の雰囲気、式の進行、暖かい対応と豊富な催しなど、不満な点はほとんどなかった。中でもフランス料理のフルコースを主体にした料理はどれも美味しく素晴らしかった。
 
ただ、お酒についてだけ一言・・・。
 それは、そこに置かれてある日本酒の貧しさのこと。

  雰囲気は洋風、料理はフランス料理主体であるので、私もウェルカムパーティではギネスのスタウトを飲み、会食になると白、赤のワインを飲みつづけた。
 キャビアが添えられた「タラバガニとアボガドのサラダ」とか、「フランス産フォアグラと鴨のロースト」など、美味しいワインが実によくマッチした。
 しかし次に出てきた「サツマイモのスープ」(これは驚くほど美味しかった!)あたりから日本の匂いが漂いはじめ、イタリアンソースかけとはいえ「きんめ鯛のソテー」あたりになると日本酒が欲しくなった。メインディッシュの「上州牛フィレ肉のグリル」ともなれば、赤ワインでももちろん美味しいが、酸味の利いた「純米酒無濾過生原酒」あたりがピッタシ合うことを何度も経験している。
 そもそもフランス料理といっても、日本で食べるものは半分は日本料理だ。素材はもちろん味付けも「日本人の口に合ったフランス料理」といって過言ではない。とすれば、なにもワインだけがいいとはいえない。ワインもいいが、それらに合う日本酒もたくさんある。純米酒を中心にした近時の「日本酒の多様化」は、それらに応えうる十分な種類を整えてきた。
 私は、ワインを注ごうとするウェイトレスに「日本酒はないか」と問うと「あります」と言うので、「日本酒のワインリストを見せてくれ」と頼んだ。しばらくしてそのウェイトレスが、一合瓶を手に現れて「スミマセン、この一種類しかありません」と、実に申し訳なさそうに言う。彼女は、リストを求める私に対し一種類しかないことを詫びたのであろうが、その酒は、まさに「申し訳なく思う」にふさわしい酒であった。その地の酒ではあったが、アルコール添加の普通酒で、とても飲めたものではない酒であった。
 これだけの美味しい料理を作るのに、なぜ純米酒や吟醸酒を揃えないのか?

  日本酒はかくも悲しい。日本で開かれるパーティでありながら、乾杯の酒はシャンパンかウィスキーの水割りかビールだ。ワインは多種類おかれているが、日本酒は一種類でその選別もほとんどなされていないと思われる。
 決して他国の酒に負けない素晴らしい日本酒がたくさん生まれているにもかかわらずである。
 日本酒をとりまくエレジーはいつまで続くのであろうか?・・・
                            


投票ボタン

blogram投票ボタン