旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

ふぐの鰭酒(ひれざけ)

2008-02-07 22:01:10 | 

 

 昔勤めた会社の施設で、OBも使用が許され値段も安い保養所があるので、OB会などは専らそこで催される。その保養所の定番料理が「ふぐのコース料理」。ふぐ刺に始まりふぐちり、ふぐ雑炊というコースである。
 そして飲む酒は「ふぐの鰭酒(ひれざけ)」がこれまた定番。いわゆる、焼いたふぐのひれを熱燗の酒につけたもので、香ばしい香りを楽しみながら飲む酒だ。酒が無くなってもふぐのひれは残り、まだまだ香ばしい香りを立てているので、熱燗酒だけを注文して注ぎ足し何杯でも飲む。
 このような酒に使う酒は概して良い酒である必要はない。焼いたひれの香りが全てに優先するので、酒の本来の味などはほとんど前面に出ない。普通酒で十分だろうしアル添三増酒でもわかりはしないだろう。せいぜい本醸造酒なら立派なものだ。
 しかも相当な熱燗を注ぐので酔う速度も速く、本来の酒の味を味わうどころの話ではない。つまりこれは、日本酒というジャンルには入らないもので、ふぐのひれの香ばしさを味わう「香味アルコール飲料」とでも言うものだと思っている。
 しかし、ふぐ料理は一般には高級料理となっているので、それを次々と平らげながら景気よく熱燗を呷るのは豪勢な気分で、酒の中身などより雰囲気に酔って、大満足に終わるのが相場だ。車座になって気炎を上げながら飲むのが好きな日本人には格好の酒かもしれない。
 普通はあまり酒も飲まない女性も、「あら・・・いい香り」なんて言いながらつい飲み過ごし、顔を赤らめておしゃべりも弾む。

  
ひれ酒にすこしみだれし女かな   小源太郎

                             

                                         


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