Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

みなとみらい大ホール『フランクフルト放送交響楽団』 C席RA前方

2012年06月02日 | 音楽
みなとみらい大ホール『フランクフルト放送交響楽団』 C席RA前方

指揮/パーヴォ・ヤルヴィ
ヴァイオリン/ヒラリー・ハーン(Vn)

個人的にはヒラリー・ハーンをお目当てに行きました。ヒラリー・ハーンの奏でるヴァイオリンの硬質な透明感のある音色が好きなのです。私にとっては3年ぶり。演奏家としてまだ細い若木といった印象だったハーンが素晴らしい枝ぶりの木に成長していたという印象を持ちました。それぐらい素晴らしい演奏を聴かせてもらいました。

メンデルスゾーン『ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64』
ヴァイオリンもオケも全体的に丁寧で軽やかでありながら一本芯の通った演奏という感じでした。華美な装飾はなく旋律がそのままに耳に飛び込んでくる。オケは地に足がついたとでも形容したくなるような重厚でしっかりとしたまとまりのある演奏。そのなかでヒラリー・ハーンは繊細で硬質な透明感のある美しい音色を重ねていく。面白い組み合わせだと思いました。ハーンはオケの音に溶け込むわけではなく、かといって飛び出てしまうわけではなくオケの素朴な色合いのある音の輪郭に一本透明感のある色を刷いたような演奏という印象を受けました。オケの響きのなかで凛々と曲想のなかを駆け抜けていくようなそんな印象さえ覚えました。また低音の響かせ方に深みが増していたように思います。ハーンは真摯に一音一音を非常にクリアに弾く演奏家ですがそこに個性があるんだなあと今回思いました。

バッハ『無伴奏Vnソナタ第2番』より“アンダンテ”と“アレグロ”。
拍手鳴りやまずハーンは2曲もアンコールを弾いてくれました。これがまた素晴らしい演奏で言葉にならないくらい。特にアンダンテは天上へと向かう魂の響きでした。なんと美しい音色なんだと涙が出そうになりました。そしてアレグロでは優しく包み込むような柔らかさのある音色。本当に素晴らしかった。ヒラリー・ハーンは本物のバッハ弾きだと思う。無伴奏Vnソナタでリサイタルをしてくれないだろうか。

ブルックナー『交響曲第8番 ハ短調』
この曲は聴いたことがない曲だったと思う。こんなに長い曲だとは知らなくてちょっとビックリ(笑)。残念ながら曲想を捉え切れなくて音を楽しんだだけになってしまった。曲自体に緩急をそれほど持たせていないのかなんとなく悠々たる大河を眺めている感じでした。聴いていてちょっと難しかったです。演奏する側も大変そうだなあ、なんて勝手に思ったり。それでもフルオーケストラ迫力ある音は十分に楽しみました。第一楽章が少し淡々としていたように思いましたが第二楽章あたりから音にまとまりが出てきて最終章に向かうまで流れるような重量感のもった響きに聴き応えがありました。音のまとまりが良いというか、よくコントロールされた響きだなあと思いました。木管、金管の音色が個人的に好みでした。


【曲目】
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
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ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調

【アンコール曲】
バッハ:無伴奏Vnソナタ第2番より“アンダンテ”“アレグロ”
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シベリウス「悲しきワルツ」