歌舞伎座『二代目錦之助襲名披露 四月大歌舞伎 夜の部』3等
『実盛物語』
仁左衛門さんのお得意の役のひとつ。「和実」である実盛にピタリと嵌っておりました。この芝居は物語を観るというよりは個々の役者さんの見せ場と子役の愛らしさを楽しむもの、だと思うのですが今回、まさしくそういう舞台でした。
仁左衛門さんはやはり姿が本当に美しいですね。決まった時のラインが本当に綺麗で惚れ惚れ致します。また台詞のノリもとても心地よく、物語る様子も情景がクッキリと。また柔らかさも持ち合わせまさしく「和実」のお見本のような実盛。今月はお孫さんと一緒のせいで、後半「おじいちゃん」の顔が出ていました。太郎吉@千之助くんの相手をする時の笑顔が完全にオーパでした(笑)それがまたほのぼの感があって可愛らしい感じ。ただそのせいかどことなく押さえ気味というかちょっと枯れた雰囲気が…。もっと若々しく押し出しを強くしていただいたほうが個人的に好きです。最後の花道での引っ込みは文句無くかっこよかったです。
太郎吉の千之助くん、7歳なんですね。大きくなりましたねえ。今回、期待に応えてしっかりとお芝居をしておりました。動きが大きく見栄えがします。このまま素直に成長していってほしいです。
葵御前の魁春さん、この方の品格あるお役は最近とみに良くなっているように思えます。小万の秀太郎さん、死体姿がですら美しい小万でした。また母として、娘としての情がほんの少しの出にも関わらずストレートに伝わってきましした。このお二人が舞台を引き締めていたと思います。
九郎助の亀蔵さん、さすがにまだ老け役はちょっと可哀相かなと思うのですが、気持ちがハッキリ出ていてなかなかいい出来、頑張ってました。
瀬尾十郎の彌十郎さん、台詞回しに深みが出てきたように思います。戻りの部分もメリハリがあって良かったです。
『口上』
二代目錦之助を暖かく見守り、応援していこうという気分に満ち溢れていました。ほのぼの感があって、夜の部は『口上』が一番楽しかったです。
『角力場』
少し辛口になってしまいました。これも期待するゆえ、ということでご了承お願い致します。
ん~、なんと書いたらいいでしょう。全体的にピリッとしない感じでした。富十郎さんは濡髪はお得意ですし、声のハリ、台詞回しの上手さは相変わらずでしたが、全盛期にあった大きさが残念ながら…。お年だからしょうがないんですけど…。『角力場』の濡髪には有無を言わさぬ大きさ、オーラが必要だと思うので、ちょっと物足りなさが。
さて、主役の錦之助さんですが、二役とも全体的に固いですね…。まず与五郎ですが、「つっころばし」って本当に難しいんだと改めて思いました。ぼんぼん、な雰囲気はありましたけど正直「つっころばし」には残念ながらなってませんでした。体の使い方、愛嬌、色気、ふわっとした抜け感等々。この役をやるには生真面目すぎる感じ。笑いどころが笑いどころにならないというか…。うーん、無理にこの役をやらせなくても。まあ今いる役者で「つっころばし」がまともに出来る役者はほとんどいませんけどね。完全なのは藤十郎さんくらいなものだし。
放駒長吉のほうは合うだろうなと思ったんですけど…。一生懸命さは伝わってくるんですけど…。この役は勢いというか前のめりくらいに前に出ないと、と思います。あとお疲れなのか極まる時に体が重そうというかいつものキレがあんまりなかったです、いつもより小さく見えました。蹲踞も安定してなかったし。襲名のプレッシャーやら色々あって疲れているんだろうとは思うのですが、どーん、と勢いよく行っていただきたいです。後半、頑張ってください。
それにしてもせっかくの襲名、丸本物の勉強ということはあるでしょうけどもう少し合った演目が他になかったのか?と思わなくもないです。最近、骨太な役で光っていた信二郎さんですから、そちら系の役があってもと思いました。
福助さんの吾妻は色ぽくて可愛らしくてとっても良かったです。獅童さんは華を添えるかと思いきや、地味でした。体の使い方がどうもへなへな…。むーん、期待した私が悪かった(;;)
『魚屋宗五郎』
かなり辛口感想です。どうやら15日の出来が良くなったようですね。
勘三郎さんは確かに上手いです。でも…勘三郎さんでもこんなことがあるんだと愕然としたくらい『魚屋宗五郎』の世界が立ち上がってこない。そして宗五郎の気持ちが立ち上がってきてない。初役でまだ試行錯誤の最中?と思ったくらい…でももう手がけた役なんですよね…なんで?なんで?絶対ニンの役だと思うし、決して悪い芝居をしてるわけじゃない。でも人物像が薄く感じてしまった。玄関先でのくどきが全然伝わってこないよ~~。ヘンだ、何かがおかしい。それと酔った時と酔いが醒めた後の切り替えも上手くできてなかったようにみえた。お疲れ??
おはまの時蔵さん、得意役です。きちんとやってる。細かい情愛があって、チャキチャキっとしていて。でも勘三郎さんとどーにも合わない。どんな夫婦かみえてこないんです。
三吉の勘太郎くん、めったに外すことのない勘太郎くんですが今回はちょっとダメかも、浮いてる…。世話物の、黙阿弥の世界に一人入れてない。最近、世話ものやってなかったせい?だからかな?世話物のなかの人になるのってある程度、経験が必要なんだろうなあ。
おなぎの七之助くん、姿も声も良いんですけど台詞でいっぱいいっぱい。
太兵衛の錦吾さんは安定感があります。時蔵さんと錦吾さんはしっかり世界に入ってたんだけどなあああああ。世話物というのはアンサンブルが命だ、と思い知りました。今回、アンサンブルがバラバラです。どこがどう良くないのか?皆が微妙にかみ合ってないとしか…。
救いは磯部主計之助の錦之助さんと浦戸十左衛門の我當さんでしょうか。どちらもニンにあったお役。錦之助さんはこういう役が一番「らしい」と思います。ご本人もリラックスしていたようにみえました。殿様然としているのは案外難しいの思うので、これぞニンてことでしょう。
『実盛物語』
仁左衛門さんのお得意の役のひとつ。「和実」である実盛にピタリと嵌っておりました。この芝居は物語を観るというよりは個々の役者さんの見せ場と子役の愛らしさを楽しむもの、だと思うのですが今回、まさしくそういう舞台でした。
仁左衛門さんはやはり姿が本当に美しいですね。決まった時のラインが本当に綺麗で惚れ惚れ致します。また台詞のノリもとても心地よく、物語る様子も情景がクッキリと。また柔らかさも持ち合わせまさしく「和実」のお見本のような実盛。今月はお孫さんと一緒のせいで、後半「おじいちゃん」の顔が出ていました。太郎吉@千之助くんの相手をする時の笑顔が完全にオーパでした(笑)それがまたほのぼの感があって可愛らしい感じ。ただそのせいかどことなく押さえ気味というかちょっと枯れた雰囲気が…。もっと若々しく押し出しを強くしていただいたほうが個人的に好きです。最後の花道での引っ込みは文句無くかっこよかったです。
太郎吉の千之助くん、7歳なんですね。大きくなりましたねえ。今回、期待に応えてしっかりとお芝居をしておりました。動きが大きく見栄えがします。このまま素直に成長していってほしいです。
葵御前の魁春さん、この方の品格あるお役は最近とみに良くなっているように思えます。小万の秀太郎さん、死体姿がですら美しい小万でした。また母として、娘としての情がほんの少しの出にも関わらずストレートに伝わってきましした。このお二人が舞台を引き締めていたと思います。
九郎助の亀蔵さん、さすがにまだ老け役はちょっと可哀相かなと思うのですが、気持ちがハッキリ出ていてなかなかいい出来、頑張ってました。
瀬尾十郎の彌十郎さん、台詞回しに深みが出てきたように思います。戻りの部分もメリハリがあって良かったです。
『口上』
二代目錦之助を暖かく見守り、応援していこうという気分に満ち溢れていました。ほのぼの感があって、夜の部は『口上』が一番楽しかったです。
『角力場』
少し辛口になってしまいました。これも期待するゆえ、ということでご了承お願い致します。
ん~、なんと書いたらいいでしょう。全体的にピリッとしない感じでした。富十郎さんは濡髪はお得意ですし、声のハリ、台詞回しの上手さは相変わらずでしたが、全盛期にあった大きさが残念ながら…。お年だからしょうがないんですけど…。『角力場』の濡髪には有無を言わさぬ大きさ、オーラが必要だと思うので、ちょっと物足りなさが。
さて、主役の錦之助さんですが、二役とも全体的に固いですね…。まず与五郎ですが、「つっころばし」って本当に難しいんだと改めて思いました。ぼんぼん、な雰囲気はありましたけど正直「つっころばし」には残念ながらなってませんでした。体の使い方、愛嬌、色気、ふわっとした抜け感等々。この役をやるには生真面目すぎる感じ。笑いどころが笑いどころにならないというか…。うーん、無理にこの役をやらせなくても。まあ今いる役者で「つっころばし」がまともに出来る役者はほとんどいませんけどね。完全なのは藤十郎さんくらいなものだし。
放駒長吉のほうは合うだろうなと思ったんですけど…。一生懸命さは伝わってくるんですけど…。この役は勢いというか前のめりくらいに前に出ないと、と思います。あとお疲れなのか極まる時に体が重そうというかいつものキレがあんまりなかったです、いつもより小さく見えました。蹲踞も安定してなかったし。襲名のプレッシャーやら色々あって疲れているんだろうとは思うのですが、どーん、と勢いよく行っていただきたいです。後半、頑張ってください。
それにしてもせっかくの襲名、丸本物の勉強ということはあるでしょうけどもう少し合った演目が他になかったのか?と思わなくもないです。最近、骨太な役で光っていた信二郎さんですから、そちら系の役があってもと思いました。
福助さんの吾妻は色ぽくて可愛らしくてとっても良かったです。獅童さんは華を添えるかと思いきや、地味でした。体の使い方がどうもへなへな…。むーん、期待した私が悪かった(;;)
『魚屋宗五郎』
かなり辛口感想です。どうやら15日の出来が良くなったようですね。
勘三郎さんは確かに上手いです。でも…勘三郎さんでもこんなことがあるんだと愕然としたくらい『魚屋宗五郎』の世界が立ち上がってこない。そして宗五郎の気持ちが立ち上がってきてない。初役でまだ試行錯誤の最中?と思ったくらい…でももう手がけた役なんですよね…なんで?なんで?絶対ニンの役だと思うし、決して悪い芝居をしてるわけじゃない。でも人物像が薄く感じてしまった。玄関先でのくどきが全然伝わってこないよ~~。ヘンだ、何かがおかしい。それと酔った時と酔いが醒めた後の切り替えも上手くできてなかったようにみえた。お疲れ??
おはまの時蔵さん、得意役です。きちんとやってる。細かい情愛があって、チャキチャキっとしていて。でも勘三郎さんとどーにも合わない。どんな夫婦かみえてこないんです。
三吉の勘太郎くん、めったに外すことのない勘太郎くんですが今回はちょっとダメかも、浮いてる…。世話物の、黙阿弥の世界に一人入れてない。最近、世話ものやってなかったせい?だからかな?世話物のなかの人になるのってある程度、経験が必要なんだろうなあ。
おなぎの七之助くん、姿も声も良いんですけど台詞でいっぱいいっぱい。
太兵衛の錦吾さんは安定感があります。時蔵さんと錦吾さんはしっかり世界に入ってたんだけどなあああああ。世話物というのはアンサンブルが命だ、と思い知りました。今回、アンサンブルがバラバラです。どこがどう良くないのか?皆が微妙にかみ合ってないとしか…。
救いは磯部主計之助の錦之助さんと浦戸十左衛門の我當さんでしょうか。どちらもニンにあったお役。錦之助さんはこういう役が一番「らしい」と思います。ご本人もリラックスしていたようにみえました。殿様然としているのは案外難しいの思うので、これぞニンてことでしょう。