7月4日に生まれて
1989年/アメリカ
愛国心とは?を考えさせられるストレートな反戦映画
shinakamさん
男性
総合
80点
ストーリー
75点
キャスト
80点
演出
75点
ビジュアル
80点
音楽
80点
ロン・コーヴィックの自伝小説をもとに「プラトーン」のオリバー・ストーン監督が映画化して2度目のオスカーを獲得した。
’46年7月4日アメリカの独立記念日に生まれた青年の葛藤の物語。主演は「レインマン」で演技派へ脱皮しようとしていたトム・クルーズで大奮闘している。
愛国心とは?を考えさせられるストレートな反戦映画であるが、自分と同世代でありながら、あまりにも違った人生を送ったヒトの半生記を観ると「作品の善し悪しでは語れない衝撃」を受ける。
この時代のアメリカは50年代・黄金の自信、60年代栄光から苦悩と挫折の連鎖、70年代厭戦ムードと混迷へと変遷の20年間であった。
戦争ごっこと野球に夢中だった少年が高校で海兵隊曹長(トム・べレンジャー)の演説に影響を受け入隊を決意する。典型的なアメリカ人の両親にとって自慢の息子であった。
序盤はロン(T・クルーズ)とドナ(キーラ・セジウィック)の青春ドラマで始まり、ベトナムの戦場では戦争ドラマへ。帰国後はひとりの男の葛藤のドラマへ移り、最後は...。
とくに戦場でのベトナム民間人と仲間を誤って射殺してしまったトラウマは戦争の惨さを訴えてくる。だが、この映画は除隊した彼の葛藤ぶりが本命題である。下半身不随の英雄は故郷での冷たい扱いに愕然とする。ここでアメリカの理想的な家庭像はもろくも崩壊しつつある。心を癒すためのメキシコのひとり旅はさらに悲惨のひとこと。同じ境遇の元傷病兵チャーリー(ウィレム・デフォー)との諍いが凄まじい。このあたりの描写がO・ストーンの真骨頂だろう。
現実は、イラク戦争でも似たようなことを行ったアメリカ。懲りずにアフガンでもこれ以上繰り返して欲しくないことをこの作品で改めて感じるが、いまのアメリカではこんなストレートな反戦映画は作れそうもない。
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