晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『すべて彼女のために』 85点

2010-03-07 10:25:43 | (欧州・アジア他) 2000~09

すべて彼女のために

2008年/フランス

久しぶり映画の醍醐味を堪能した

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

題名からラヴ・ストーリーを連想するが、どちらかというとサスペンスである。それも単なるサペンスではなく極限状態で人間は愛する人のためにどのような行動をとるのか?というフランスならではの人間ドラマでもある。
監督はこれが長編デビュー作のフレッド・カヴァイエで、ギョ-ム・ルマン原案を共同で脚本化している。
ファースト・シーンは出血した男が車を必死に運転している。タイトルが終わるとエレベータでの濃厚なキス・シーンがアップで映り、それは3年前の男で、女は帰宅途中の妻で夫婦と分かる。翌朝自宅で出勤の支度をしているさなか、幼い息子の前で妻が突然逮捕される。たたみかけるようなこのつかみが圧巻で目が離せなくなる。
雑誌編集長の妻リザ(ダイアン・クルーザー)が上司を殺した罪であるが、誤認逮捕であることが観客には伝えられる。その間わずか15分程度のテンポの良さで緊迫感が漂う。国語教師の夫ジュリアン(ヴァンサン・ランドン)は冤罪を晴らそうと必死になるが、3年後禁固20年の刑が確定してしまう。
これからの展開は、無実を晴らすための状況証拠を切り崩し裁判で立証するか、警察に頼らず真犯人を突き止めるかを想像するが、本編はなんと「脱獄」。いかにも突飛な流れのようだがそれなりの布石があって、思わずハラハラ・ドキドキの緊迫感の96分、久しぶり映画の醍醐味を堪能した。
主演のV・ランドンは幅広い役をこなすフランスの名優だが、平凡な教師が妻のために究極の選択をして実行しようとする難しい役を説得力をもって演じ、彼なくしてこの映画は成功しなかっただろう。妻のリザ役のD・クルーザーは、近作の「イングロリアス・バスターズ」で魅せた妖艶さとは違って、このヒトのためならと思わずにはいられない美しさを披露してくれた。いま目が離せない女優のひとりだ。
「クラッシュ」「ミリオンダラー・ベイビー」で心情を描くことには卓越したポール・ハギスが、ラッセル・クロウ主演でリメイクして只今編集中とのこと。公開が楽しみだ。