ラウンド・ミッドナイト
1986年/アメリカ
ジャズ・ファンには堪らない本物の魅力
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 90点
演出 80点
ビジュアル 80点
音楽 90点
実在のジャズ・ピアニスト、バド・パウエルの実話をもとにテナー・サックスの巨人と彼に心酔する若きイラストレーターの交流を描いた仏米合作映画。主演のデクスター・ゴードンをはじめ、一流ジャズメンが出演・演奏していてファンには堪らない本物の魅力を味わえる珠玉の作品。
’59パリのブルーノートへ出演するためにNYを立ったデイル・ターナー(D・ゴードン)。クラブの音楽監督・ピアニストのエディ(ハービー・ハンコック)らが温かく迎える。雨が降りしきるなか外で演奏に聴き耳を立てている若い男がいた。
9歳の娘を持つ貧しいフランシス(フランソワ・クルゼ)で、神のように素晴らしかったと感動する。たった2杯のビールを奢ったことがきっかけで、交流が深まり一緒に住むようになる。
酒とドラッグで体をむしばられ命を縮めてしまったD・ゴードンは自伝ではないかと思わせる自然な演技で、この作品は彼なしでは考えられなかったほど。オスカー候補になったのもうなずける。
バド・パウエルは軍隊時代妻が美人の白人だったので上官に苛められたり、後の妻で愛称「バター・カップ」がマネージャーでギャラは本人に渡らなかったという逸話がありこの映画にも出てくる。
孤高のジャズマンにとってフランスにいた晩年は人生を振り返った貴重な空間と最後の創造行為のときだった。別れのパーティ、録音スタジオ、リヨンの旅が詩情豊かなドキュメント映画のようだ。ベルトラン・タヴェルニエ監督は筋金入りのジャズファンらしく、ドラマとして必要以上に盛り上げることなく退廃的なムードにどっぷり浸かって映像化してくれた。本作品にも出演しているハービー・ハンコックがオスカー・オリジナル作曲賞を受賞している。NYかぶれの興行師としてマーティン・スコセッシが出演しているのも一興。