晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『インビクタス/負けざる者たち』(09・米) 80点

2010-02-14 09:57:34 | (米国) 2000~09 




インビクタス/負けざる者たち


2009年/アメリカ






衰えを知らないC・イーストウッド








総合★★★★☆
80



ストーリー

★★★★☆
80点




キャスト

★★★★☆
85点




演出

★★★★☆
80点




ビジュアル

★★★★☆
80点




音楽

★★★★☆
80点





黒人初の南ア大統領N・マンデラが就任間もない’95、自国で行われた第3回ラグビーワールド・カップの物語。マンデラと親交があったモーガン・フリーマンが長年温めていた企画をクリント・イーストウッドが監督した。2人のコンビは「許されざるもの」(’92)「ミリオンダラー・ベイビー」(’04)に続く3本目だが何れも外れはなく、今回も単なる偉人伝を超えた心に沁みるヒューマン・ストーリーに仕上がっている。
緑の芝生で白人スポーツの象徴であるラグビーをしている若者たち。道路を挟んで黒人少年たちが荒れた土のなかでサッカーに興じている。カメラはその道路を反アパルトヘイトの罪で27年間の刑期を終えたN・マンデラの車が通過してゆくのを俯瞰で捉えてゆく。このファースト・シーンで観客の心をわしづかみにしてしまう。アンソニー・ベッカムの脚本に応えたC・イーストウッドの手腕は衰えを見せず、高いメッセージとともに最後まで魅了される。
スポーツを政治利用することは古今東西例を挙げればキリがないが、囚人から大統領になったマンデラの復讐をせず赦すことの偉大さを人種問題を抱えた自国の人々に訴えた政治センスは素晴らしいとしか言いようがない。復讐しないイーストウッドは前作「グラン・トリノ」で初めて観たが、彼はいまのアメリカにこのメッセージを託していたのかもしれない。南ア代表チーム<スプリング・ボクス>のキャプテン フランソワ・ピナール(マット・デイモン)は典型的な白人家庭に育ち、アパルトヘイトを当たり前のように過ごしてきた。2人に近況を交互にだしながら人柄を描いてゆく手法も上手い。彼を官邸に呼んだマンデラのシーンが静かな感動を呼ぶ。
後半はワールド・カップのドキュメントへ移ってゆくが、ラグビーに興味がない人にも、臨場感たっぷりでスポーツ映画としても充分見ごたえがある。とくにモールのシーンでの息づかいはトム・スターンの撮影をはじめイーストウッド・チームの技の冴えが光る。決勝では強豪ニュージーランドを相手に大接戦、延長でドロップ・ゴールを決めた南アが勝つなど、事実がドラマを上回る展開となる。日本がニュージーランドに歴史的大敗を喫したことしか記憶がない自分にとって、リアルタイムで見るような興奮を覚える。
M・フリーマンはマンデラの癖を研究して姿かたちが違っていても全く違和感のない演技。オスカーを取って欲しい。対するM・デイモンも吹き替えなしの大健闘もさることながら、あらゆるプレッシャーを乗り越え不屈の戦いを勝ち取った若者を等身大に見せ、近作では最も好演している。
いまの南アには人種差別はなくなったが、貧富の差は広がり諸問題を抱えている。次回のサッカーワールド・カップは何をもたらすのだろうか?人種の壁は埋まらない現実は、この映画がきれいごとに写るともいえる。イーストウッドは百も承知で敢えてこの作品を監督したに違いない。







最新の画像もっと見る

コメントを投稿