・ 生まれ故郷・トスカーナを舞台に養蜂家の暮らしを描いたA・ロルヴァケル監督。
イタリアの新進監督のアリーチェ・ロルヴァケルの長編2作目は、彼女の生まれ故郷トスカーナの養蜂家で育った実生活を反映した家族の物語で、カンヌ映画祭のグランプリを受賞している。
ドイツ移民のヴォルフガング一家は、トスカーナ地方の人里離れた村で昔ながらの養蜂で暮らしていた。一家はイタリア人の妻・アンジェリカと4人の娘、居候のココと女ばかりの家族。
長女のジェルソミーナは少女ながら昔気質の父から養蜂の手解きを受け、頼りになる存在となっている。
そんな夏のある日、古代エトルリアの遺跡やご当地産業を紹介するTV番組「ふしぎな国」の撮影隊がきたり、ドイツの少年の更生プログラムで14歳の少年・マルティンを預かることとなり、一家にはさざ波が立ち始める。
原題のように、<とても不思議な映画>である。柵で囲まれた石造りの家は、世の中から隔離したようにポツリとあって現代社会を拒否する暮らし。
しかしながら、大切な蜂は近隣農家の除草剤使用の影響で大量に死んでしまうし、食品衛生上の条件をクリアできないと作業停止の処分を受けるがそのためには費用が掛かるという状況にある。
何よりジェルソミーナが大人へ成長する兆しへの戸惑いがヴォルグガングを苛立たせている。
ジェルソミーナもマルティンに喜々として仕事を教える父に複雑な感情を抱いている自分に気付く。
監督は、独りよがりな父をフェリーニの「道」・ザンパノとオーバーラップさせるように、娘・ジェルソミーナを扱う。そして父から娘へのプレゼントがラクダだった。
幼い娘たちは大喜びだが、妻は離婚するといいジェルソミーナは父の無理解に戸惑う。
非現代生活の村に訪れたTV撮影隊、なかでも司会のミリー(モニカ・ベルッチ)の神秘的な美しさは、ジェルソミーナに別世界を見せるエポックメイキングとなっていく。
そしてマルティンとの淡い交流・・・。
ヒロイン・ジェルソミーナを演じたマリア・アレクサンドラ・ルングは映画初出演で少女らしい微妙な心理をごく自然に演じている。次女の愛嬌ある表情や幼い娘たちもまるで本当の姉妹のよう。
古代エトルリア人たちがそうであったように、一家も今の暮らしを未来永劫続けることができないのを薄々感じながら、必死に生きているのだ。
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