・ 小品ながら拾い物の良質な戦争ヒューマン・ドラマ。
42年ナチス・ドイツ軍がロシア南部に侵略した「ブラウ作戦」。ロシア軍参謀本部の作戦失敗により銃殺刑が決まった若き中尉と本部へ送還する役目を命令された衛兵が、生死を共にするうち相互に生まれる儚い友情を描いたロシア製戦争ドラマ。監督はセルゲイ・ボボフ。
ロシア映画なので戦争オタクには戦車が本物感があり戦争シーンもリアルに映る。欧米の派手な戦争アクションと比較するとかなり見劣りするが、なかなか見応えある作品に仕上がっている。
邦題が勇ましく、おまけに副題が<ヒトラーの蒼き野望>とあるので、大掛かりな戦争映画を想定するが、ヒトラーは登場せず若き兵士の友情物語を通じて戦争の虚しさを訴えている想定外の展開。
原題の「ベルリンへの道」もぴんと来ないが、売らんかなの題名創りは作品イメージを損なう典型的な事例。
参謀本部がナチス軍に翻弄され指令を伝えられず部隊が壊滅状態になり、責任を押し付けられたオルガホフ中尉(ユーリー・ボリソフ)。即席軍法会議で銃殺刑が決まってしまう。刑が執行されるには本部の承認がいるため、見張り役だったズラバエブ衛兵(アミール・アブディカロフ)が本部へ護送する役目を命令される。
若きロシア人エリート中尉と堅物で文字も書けないカガフ人兵卒の命懸けの旅は、敵の襲撃が何時あるか分からない運命共同体でありホノかな友情が芽生え始める。
思わぬ展開から二人は英雄扱いにされるシーンはイーストウッドの「父親たちの星条旗」(05)を連想したり、全体の流れはジョン・ウーの「ブロークバック・マウンティン」(06)のようでもある。
ズラバエブがオルガホフに頼んだ母への手紙は届いたのだろうか?戦争に翻弄される兵の悲劇を静かに描いた拾い物のヒューマンドラマだった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます