晴れ、ときどき映画三昧

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『クロッシング』 80点

2010-11-16 11:33:06 | (米国) 2000~09 

クロッシング

2008年/アメリカ

アメリカの閉塞感を切り取った警官のドラマ

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

「トレーニング・デイ」のアントワン・フークア監督が久しぶりに描いた正義と悪の境界で悩む警官の葛藤ドラマ。脚本はブルックリン育ちでNY地下鉄に勤務していたマイケル・C・マーティンのデビュー作。
退職を7日後に控え何も功績がない孤独なエディ(リチャード・ギア)、麻薬捜査官で5人の子持ちで喘息の妻の病気を気遣うサル(イーサン・ホーク)、潜入捜査官に嫌気がさしながら刑事に昇格するにはボスのキャズ(ウェズリー・スナイプス)のオトリ捜査をしなければならないタンゴ(ドン・チードル)。犯罪多発地区の現場で働く3人の警察官。それぞれが報われない仕事を抱えながら過ごす7日間はイースト・ブルックリンでの撮影によって、とてもリアルでドラマチックに繰り広げられる。原題はズバリ「ブルックリンズ・ファイネスト(ブルックリンの警察官)」で「クロッシング」は邦題。3人はすれ違っても面識はなく、偶然のできごとが多層構造となり終盤で見事に帰結するので邦題も悪くはない。
3人のうち最も悲惨なのはサルで年棒が2万ドルで信仰深く現状を打破するためには広い家に引っ越すしかない。「欲しいのは神の赦しではなく神の助けだ」という悲痛な叫び。「トレーニング・デイ」でデンゼル・ワシントンを追及し逮捕した若き正義漢を演じたE・ホークが演じただけに運命的なものを感じてしまう。
R・ギアは相変わらず芸域の広さを魅せ、等身大の警官が奥底に潜んでいた善を退職した日に発揮した何処までも孤独な男を渋く演じている。
D・チードルは潜入先のボスから命を救われた恩義があり兄のように親しみを感じてしまう人間的な警官。上司ウィル・パットンとその上司敏腕捜査官エレン・バーキンとの3者の関係は組織にがんじがらめになる辛さを描写してとても切ない。
それぞれのドラマは過去にも良く取り上げられているテーマながら3つの話が同時並行的に進むと厚みが俄然違って見える。
ボスのキャズが「NYの犯罪が減ったのはジュリアーニ市長の功績ではなく子供たちがゲームに夢中になって外出しなくなったからだ」という台詞が妙に説得力があった。
男のドラマで女優の出番は少ないがエディが通う娼婦チャンテルに扮したシャノン・ケインの自立した女が新人ながら印象に残った。



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