晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「この愛のために撃て」(10・仏) 80点

2013-05-23 17:34:40 |  (欧州・アジア他) 2010~15
 ・カヴァイエ監督の新世代フレンチ・ノワール第2弾

  

 「すべて彼女のために」(08)で新世代フレンチ・ノワールとして脚光を浴びたフレッド・カヴァイエ監督。前作に続いて妻を救うため命懸けで孤軍奮闘する夫を主人公にしたアクション映画を製作した。

 今回は妊娠中の妻ナディア(エレナ・アナヤ)を自宅で誘拐された看護助手のサミュエル(ジル・ルルーシュ)が主人公。看護した患者・サルテ(ロジュデイ・ゼム)が実業家殺害の容疑者だったため、仲間がサルテを病院から救いだそうとナディアを人質とした。妻を無事に救いだすには3時間以内にサルテを病院から指定場所まで連れ出すしかない。警察に言えば殺されてしまうという追い詰められた状況だ。

 平凡なパリ市民が行き掛かりで犯罪に巻き込まれるという、<巻き込まれ型サスペンス>。この種の名作ではヒッチコックの「北北西に進路を取れ」や「知り過ぎていた男」などがある。本作はそれには及ばないが、身重の妻を案じながら警察のマークを掻い潜って患者を連れ出すという誘拐犯と警察を敵に廻した主人公の必死さが観客の共感を呼ぶ。

 カヴァイエ監督は、「日常に近いところで、非現実的な作品を作ること」を信条としている。今回はパリの地下鉄での追跡シーンがそれで、警察に追われるサミュエルが迷路のような地下通路を無我夢中で走る姿が息つく暇もない。

 シンプルな物語をチョッピリ複雑にしたのが警察内部の争い。殺人課のファーブル刑事(ミレーユ・ペリエ)が何と担当刑事のヴェルネール(ジェラール・ランヴァン)にあっさり射殺されてしまうのにびっくり。実業家を殺害したのがサルテとその仲間ではないことが判明する。ここで一般市民・サミュエルと裏世界のプロフェッショナル・サルテの奇妙な友情が生まれる。

 序盤を除いて、約80分がノンストップの展開で一気に持って行くシナリオが上手く出来ていて、観客に余計なことを考えさせないところがミソ。警察内部で動かぬ証拠が出て一件落着するが、エンディングがひとヒネリあるところがオシャレなところでもある。

 これもハリウッドでリメイクされそうだ。主人公サミュエルとその妻ナディア、さらにフレンチ・ノワールではお馴染みのサルテを演じたR・ゼムとヴェルネールを演じたG・ランヴァンの4人を誰が演じるか想像するのも楽しい。
 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿