・ 血縁だけではない<家族とは何か?>を問う人間模様。
作家・重松清と脚本家荒井晴彦が21年前約束した映画化を三島有紀子監督で実現した。
バツイチ同士の田中信(浅野忠信)と奈苗(田中麗奈)夫婦。信の元妻・友佳(寺島しのぶ)と奈苗の元夫・沢田(宮藤官九郎)。4人の不器用な大人たちが繰り広げる、本当の家族とは何か?そして血縁関係の有無だけでは決められない現代の家族の在り方を問う人間模様を描いている。
奈苗の妊娠があって小6の薫(南沙良)が本当の父親と会いたいと言い出し、平穏だった田中家の歯車が狂い始める。
奈苗は元夫の沢田がDV常習者だったため猛反対するが、信は薫の辛辣な言葉に傷つき疲れ果ててしまう。考えあぐねた末、沢田に面会し対面させようとするがお金を要求される。
表面的には普通の人だが、実は一筋縄では行かない役柄に定評がある浅野忠信が、等身大の父親役を演じている。監督が最初から彼をキャスティングしていたのは、観客の予想を裏切ってのことか?
ここでは、仕事より家庭優先のため出向して慣れない倉庫作業を強いられ、家庭では妻に頼られ長女にパパは一人でいいと詰られる気の毒な男。
前妻と実の娘沙織(鎌田らい樹)、妻と二人の娘の5人を相手に、終始受けの演技に徹しながら表情ひとつで微妙な感情の変化で魅せる。
田中麗奈の夫を頼り平穏な家庭を築くことが生き甲斐の専業主婦。寺島しのぶの大学准教授役とは両極だが、ふたりとも現代女性の在り方を象徴していて期待どおりの好演。
宮藤官九郎扮するダメ男ぶりが役得だった。家族に束縛されるのはまっぴらで暴力を振るうDV男だが、長女と対面するとき髭を綺麗に剃り髪を整えたスーツ姿でションボリとベンチで座る姿が愛おしい。
大人たちに交じって3人の子役が大活躍。小6の薫と沙織は思春期の悩みを夫々のキャラクターで演じ、次女の幼い恵理子(新井音羽)の、まるで演技している感じがしない自然な言動は、改めて天才子役であることを証明した。
ドキュメンタリー出身らしく即興演技を巧みに演出した三島監督、21年前書き下ろした原作・重松清の先見性、荒井晴彦の巧みな人間の心理描写によるトライアングルが<家族とは?>を観客に問いかけてくる。
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