・ 詩からストーリーを起こし映像化した石井裕也監督・脚本によるラブ・ストーリー。
「舟を編む」など若手邦画界をリードしている石井裕也監督が、最果タヒの詩集から東京の片隅で孤独を抱えながら懸命に生きる若者同士の繊細な恋愛模様を映像化。17年キネ旬邦画部門のベスト1に輝いた。
看護師・美香(石橋静河)は言葉で表せない不安や孤独を抱えながら、夜はガールズバーで働いている。
日雇いの工事現場で働いている慎二(池松壮亮)は死の予感を胸に直向きに暮らしている。
そんな二人がガールズバーで出会い、その後運命的な遭遇によって心を通わせて行く。
12本目というハイペースで映画化している33歳・石井監督が、詩からストーリーを組み立て映像化するという実験的な試みに挑んで、リアリティとファンタジーの融合が巧みに絡み合っている。
途中アニメーションに変わったり詩が流れたりするのに戸惑いはあったが、 インテリだった老人の孤独死や出稼ぎ労働者の喜怒哀楽をみながら、現在の様々な世相を反映した時代を切り取ったラブストーリーに仕上がっている。きっと20年後本作を観て、この時代の渋谷や新宿を懐かしむ人も多いことだろう。
美香を演じた石橋静河は、父・石橋凌に面影がそっくりで母・原田美枝子のような演技力には及ばないが、監督の演出によって不安と孤独を抱えながら懸命に生きる女性にピッタリ。
慎二の池松壮亮は監督お気に入りの俳優だが、今回はこんな若者が現代の底辺を支えているのでは?と想わせるイメージぴったりの役柄で最高の演技を魅せている。
もうひとり監督の常連である慎二の同僚に扮した松田龍平、同じく同僚で独身の中年・田中哲司が個性豊かな存在で脇を固め、市川実日子、三浦貴大は友情出演的な役割りで目を引いた。
<透明にならなくては息もできないこの街できみをみつけた>という詩のように、都会で暮らす不器用な二人が、希望をもって生きて行ける社会であることを願わずにはいられない。
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