マダムと女房
1931年/日本
田中絹代の声に驚く観客の姿が目に浮かぶ
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 75点
キャスト 80点
演出 85点
ビジュアル 75点
音楽 80点
邦画の歴史に欠かせない日本初の本格的トーキー映画。過去に字幕を入れた音声入りの短編はあったが殆ど会話だけの1時間ドラマは初めてだそうだ。音声を担当した名前を採って<土橋式トーキー>と呼ばれる。監督は小市民の日常を喜劇的に描くのを得意とする五所平之助で、音をフンダンに取り入れた小喜劇に仕上がっている。
洒落た洋館の油絵を描いている画家とそれを観ていた男が喧嘩となり風呂屋へ飛び込むが、そこは女湯で追い出され風呂から出た女性に仲裁されて始まる。まるでサイレント映画のような出だしだが、観客は台詞が聞こえるだけで驚かされる。
まして当時人気絶頂のアイドル田中絹代の女房が主人公の劇作家・渡辺篤に「ねえ、あなた~」と言っただけで観客はどよめいたという。
台詞だけでなく赤ん坊の泣き声、目覚まし時計、猫の泣き声、ネズミの足跡からミシンやマージャンの音まで、何気ない生活の音が次々と出てくる。同時録音したスタッフの苦労は想像に難くない。
製作時期(満州事変の年)を想うと、欧米列強に負けじと精一杯頑張っていた日本の国情が偲ばれる。まずタイトルが横文字である。右読みと字体が如何にも時代を感じるが当時としては極めてモダン。台詞にマダム・モガ・ジャズ・パパ・ママおまけにエロまで出てくるし、主人公は平屋の借家住まいだが隣は画家が描いた洋館である。なかで聴こえるのはジャズバンドの演奏だ。主題歌がサトウ八チロー作詞による「スピード時代」と「スピードホイ」とくれば勢いに任せアジア進出を急かされた国情にマッチしている。庶民の束の間の憩いの場である映画に、大らかな「ブロードウェイ・メロディ」「私の青空」を歌いながら歩く主人公一家の楽しそうな姿が憧れだったのかも。
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