愛染かつら('38)
1938年/日本
すれ違いメロドラマの元祖
shinakamさん
男性
総合 70点
ストーリー 70点
キャスト 85点
演出 70点
ビジュアル 70点
音楽 80点
川口松太郎の婦人雑誌連載小説を野村浩将監督、野田高悟脚色で映画化。戦前大ヒットしたすれ違いメロドラマ元祖で、戦後の「君の名は」と双璧。主題歌「旅の夜風」は霧島昇・ミスコロンビア(松原操)が歌った歌謡史に残る名曲。その6年後に生まれた筆者が「花も嵐も乗り越えて~」と歌えるほど。
若くして結婚し娘を儲けたが夫と死別した23歳の看護婦・高石かつ枝と病院の御曹司・津村浩三とのラブ・ストーリー。フィルム保管が充分でなく、本作は前・後篇、続編、完結編を1本化しているため、残念ながらハナシが繋がっていない部分もあり唐突な個所が多く、2人を巡るハラハラ・ドキドキ感がリアルには伝わってこない。
それでも実らぬ恋を成就させるため京都へ駆け落ちしようと新橋駅で待ち合わせをするが、かつ枝の娘が発熱し発車する列車をホームから必死に追うヒロインの姿には定番ながら臨場感があった。
勘違いとすれ違いをフンダンに盛り込んだメロドラマは古今東西数多く見られるが、時代が殺伐としてきたこの時期に公開された本作は大ヒットする条件がぴったりハマったことだろう。
ヒロイン高石かつ枝に扮した田中絹代はどちらかというと庶民的な風貌がこの役にマッチして一躍大女優へ上りつめてゆく。その記念碑的な作品でもある。
相手役の津村浩三を演じた2枚目俳優・上原謙は加山雄三の父でこの前年に加山が生まれている。演技よりも如何にも御曹司風の姿・形は女性ファンをとりこにして戦後も2枚目を貫き通した。
本作が大衆娯楽の頂点にあった頃の映画史に残る金字塔を打ち立てたことだけは間違いない。改めて作品の評価をするのは、あまり意味がないような気がする。
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