湖のほとりで
2007年/イタリア
人を愛することの難しさを浮き彫りにした傑作
総合 85点
ストーリー 85点
キャスト 85点
演出 85点
ビジュアル 85点
音楽 80点
ノルウェー・ミステリーの女王、カリン・フォッスムの原作「見知らぬ男の視線」を、イタリアに舞台を移したアンドレア・モライヨーリ監督の長編デビュー作。
単館ロードショーとはいえ封切り1週間後で上映30分前に満席のため、次回上映で何とか観られた。さすがイタリアのアカデミー賞といわれるダヴィッド・デイ・ドナテッロ賞10部門受賞作品である。
オープニングは幼女誘拐事件を思わせ、全裸の他殺死体が発見される経緯はサイコ・スリラーの雰囲気。単なる犯人探しのミステリーではなく、事件を追うサンツィオ警部(トニ・セルヴィッロ)の訊き込みで登場する人々の葛藤や他人には言えない秘密が浮き彫りになってゆく。それが警部自身の抱えている問題になっていく構成が見事で、<人を愛することの難しさを描いた傑作>に仕上がっている。
長年ナンニ・モレッティの助監督を務めていただけあって、美しい風景描写を背景に人間の奥にある感情の曖昧さ・温かさを的確に捉えていて、とても長編デビュー作とは思えない。サンドロ・ペトラーリアの脚本も、ゆったりとしたテンポながら95分で纏め上げた手腕が素晴らしい。
ただ登場人物全員があまりにも過酷な境遇なので、如何に人間ドラマとはいえ最後まで重たい雰囲気が残ってしまいスッキリしなかった。ラストシーンにもう一工夫があっても...。
主演のトニ・セルヴィッロは、今やイタリアを代表する男優。彼との競演を望んでヴァレリア・コリーノ、オメロ・アントヌッテイなど地味ながら達者な俳優達が集まったのも成功の要因だろう。
そして出番は少ないがモデル出身の新人、アレッシア・ピオヴァンが話題性充分。「夢を見ていた。起こさないで。」という台詞だけでスターの仲間入りした感がある。モライヨーリ監督共々、今後が楽しみである。
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